トランプ米政権の司法省は24日、ニューヨーク市のエリック・アダムズ市長らの政策が、不法移民摘発などの連邦政府の法的行為を妨害しているとして、連邦地裁に訴訟を起こした。ニューヨーク市は、不法移民に対しても行政サービスを提供する全米最大の「サンクチュアリーシティー(聖域都市)」。それを問題視したトランプ政権が、ニューヨーク市を「最大のターゲット」として不法移民摘発を強化している。グリーンカード(永住権)保持者の摘発さえ起きており、ブルドーザー的な捜査には警戒が必要だ。

パンデミック時代に始まったアジアンヘイトの件数はやや減少したものの、パンデミック前の水準に戻ってはいない。このため、ミッドタウンを歩いていたグリーンカードを持つ日本人が、通行人に「不法移民だ!」と言われたケースもある。
グリーンカード保持者でも、帰省や海外旅行から入国する際、移民法などに違反していたり、長期にアメリカを離れていることを理由に入国を拒否されることがある。国内外で政治的活動をしているかなども空港での捜査につながる可能性がある。日本人でも気をつけるべきだ。
米移民税関取締局(ICE)の摘発は激しさを増している。不法移民が合法的滞在許可を得るプロセスとして、移民裁判所の召喚で出廷したところを軒並みに逮捕している。出廷したクィーンズの高校生でさえ6月に逮捕され、家族と引き離された(7月中旬釈放)。
不法、合法を問わず、逮捕されて収容されるICE施設での非人間的な待遇も問題化している。市民団体が公開したニューヨーク・ダウンタウンの施設内のビデオによると、トイレは約30人の部屋に2つで囲いなし。ベッドも寝る場所も人数分はなく、床に敷いた災害用アルミホイルブランケットを交代で使っている。フロリダ州からの報道では、インフルエンザにかかった人が治療も受けず数十人と同室にいる。食事はスナック程度が1日1回出るだけで、ボイスメモによる「食事も薬もくれない。寒い」「犬同然の扱いだ」という証言もある。
移民の間では外出を控え、大きなイベントを中止する動きが出ている。ニューヨーク市の北部にあるニューロシェル市は、ヒスパニック系コミュニティー最大の食のイベント「テイスト・オブ・ユニオン・アベニュー」を中止した。「公共の安全を考慮した」というが、ICEの動きを懸念したためで、コミュニティーでは外食する人も減り、ローカル経済に影響が出ている(CBSによる)。
サンクチュアリーシティーでは、不法移民が教育、社会福祉などのサービスを受けられる。ロサンゼルスなど数百を超える大都市、州、郡などが法制化しているが、トランプ政権は最大のニューヨーク市を狙い撃ちすることで、民主党地盤の他の自治体に圧力をかける狙いだ。
文・写真/津山恵子
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