■中国(共産党政権)は日本には勝っていない
ここで、はっきり述べておきたいが、中国やロシア(旧ソ連)、韓国(北朝鮮も含む)が対日戦争の勝利を祝うのに、歴史的な裏付けはない。
中国もロシアも、第2次大戦で日本に勝ってなどいないからだ。あの大戦の戦勝国は、アメリカただ1国だけである。連合国側のどんな国も、アメリカの支援・援助がなければ日独伊には勝てなかった。
日中戦争から太平洋戦争に至るまで、日本と正面から戦っていたのは蒋介石の国民党政権であって、毛沢東の共産党政権(八路軍)ではない。彼らは、ゲリラをやりながら逃げ回っていただけである。
戦後、アメリカが国民党の援助から手を引かなかったら、北京政権は誕生していない。それなのに、現在の共産党、習近平政権が日本に勝ったことを祝うなど、歴史に真摯に向き合っているとは思えない。
■ロシアも韓国も、「戦勝国」であるはずがない
ロシアもまたしかりである。ソ連は日ソ不可侵条約を一方的に破って、ただ領土を奪うためにだけに参戦した。しかも、8月15日の日本のポツダム宣言受諾をもってしも戦闘をやめなかった。
独ソ戦にしても、ソ連はアメリカの「武器貸与法」による大量の軍事援助がなければ、ドイツに勝てなかった。アメリカから送られた大量の武器がなければ、ターニングポイントとなったスターリングラード攻防戦の勝利などありえなかった。また、西部戦線がなければ、ソ連軍が先にベルリンに到達することは不可能だった。
韓国に対しては、言うことがない。韓国は日本だったのだから、独立はまったくのアメリカのおかげ。それに、日本統治時代に大きな独立運動などなかった。
■イタリアの記念日は降伏した日ではない
このようなことから、日本のこれ以上の謝罪は必要ないし、意味がないというのが私の見方だ。ただ、反省はする必要がある。自国民を300万人も死に追いやった戦争指導者たちの罪は重い。なにより、負けるとわかっているのに、アメリカを相手に戦争を決断するなどあり得ない無知・無能さだ。
そこで、日本が戦後80年になにをすべきか、首相談話を出すのならどうすべきかを考えると、やはり、イタリア、ドイツ方式がいいのではないかと思う。
イタリアの敗戦は特殊で、終戦記念日は4月25日の「解放記念日」(Festa della Liberazione)である。イタリアは、1943年9月8日に連合国に無条件降伏したが、北イタリアはドイツ占領が続いた。このドイツ占領からパルチザンが主要都市を解放したのが1945年4月25日である。
よって、イタリアではこの日を「解放記念日」と呼び、国民の休日としている。つまり、敗戦ではなく、国民がファシストから「解放」された日なのである。
■ドイツのやり方がもっとも参考になる
ドイツの場合も、「解放」という意味では同じだ。
ドイツは、敗戦40年にあたる1985年、当時の大統領ワイツゼッカーが、「過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる」と演説し、5月8日を「ドイツ史の誤った流れの終点」と位置付け、ナチスからの「解放の日」であると述べた。
こうしたことを踏まえて、2020年の75年式典では、シュタインマイヤー大統領が、「心の底からこうした確信が得られるまで、3世代の歳月がかかった」とし、「5月8日は解放の日だった」と、再び強調したのだ。
ならば、日本も、8月15日を「軍国主義から自由と民主主義への解放の日」としたらどうだろうか。もう謝罪はいらない。真摯に歴史と向き合い、首相はなによりも国民と世界に向かって、「解放された」ことを訴えるべきではなかろうか。
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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