■ツバルは国土消滅、ハワイはビーチがなくなる
ほんの数年前まで、まだまだ先の話だと思っていたことが、もう起こり出している。酷暑到来より、よりはっきりしているのが、海面上昇による陸地消滅だ。
最近、日本の海岸を歩けば、このことを痛切に感じる。どこも砂浜が後退しているからだ。
7月18日の報道によれば、海面上昇で国家消滅の危機にあるツバルでは、国民の半数に相当する5000人超が、オーストラリアへの移住枠に応募したという。オーストラリアは、2023年にツバルと条約を結び、毎年280人の移住受け入れを決めている。
そのオーストラリアでも、今後80年間でビーチの約40%を失うという調査研究が出ている。これは、海岸線が100メートル以上後退することを意味する。そのため、シドニー近辺のビーチ沿いの不動産価格は下落傾向にある。
ハワイも同じだ。ハワイ大学の調査研究は、2050年までに、ハワイのビーチのうち約4割が消失する可能性があるとしている。
ちなみに、ワイキキビーチは砂を人口的に補充しているビーチで、このメインテナンスは定期的に行われているが、いまや、海面上昇のスピードに追いつかないし、工事費用もかさむ一方という。
■トランプがやっている「温暖化促進策」の愚
というわけで、なんとか温暖化を阻止して、目標の1.5℃は無理としても2.0℃ぐらいに抑えられれば、危機は拡大しない。
しかし、トランプのような「温暖化はフェイクだ」と科学を否定し、パリ協定を離脱して、化石燃料を「掘って、掘って、掘りまくれ!」というトンデモ大統領がいる限り、危機は深刻化する。
なにしろ、トランプがやっていることは、「温暖化促促進策」である。
パリ協定以外に次々と国際協定から離脱し、研究機関から温暖化研究、気候変動研究をしている主要な科学者らを追放。予算も大幅に削った。
そのうえで、火力発電所が排出するCO2の回収を義務付ける規制を撤廃した。もちろん、「EV義務化政策」も廃止してしまった。
これでは、アメリカはCO2を含む温室効果ガス(GHG)を出し放題になってしまう。ちなみに、GHG の排出量ランキングは、1位:中国:約31.18%、2位:アメリカ:約14.03%、3位:インド:約7.15%である。
■なぜ温暖化防止への意識が盛り上がらないのか?
ともかく、トランプが一刻も早く失権することを祈るしかないが、それ以上に問題なのが、現在、世界的に温暖化を阻止しようという機運が薄れていることだろう。
とくに日本はそれが顕著である。
前回の参院選で躍進した参政党などは、「温暖化対策を止めろ」と、党首が国会で言うのだから信じがたい。参政党は陰謀論に染まっているとしても、そのほかの政党、政治家たちの意識も本当に低い。よって、国民の意識も低い。
温暖化防止のために1人1人ができることは小さい。いますぐ、ガソリン車を捨ててEVに切り替えても、1人だけではどうにもならない。そのため、「自分がやらなくても、どうせ誰かがやってくれる」という意識が、社会全体を覆っている。
また、日々の報道を見ても、最高気温更新、歴史的な猛暑などと騒ぎ、その原因を解説するが、それは気圧、気流、海水温などの気候要因だけだ。人間の経済活動、温室効果ガス(GHG)の排出が根本原因だとは、ひと言も言わない。これでは、温暖化対策は進まない。
この続きは9月12日(金)発行の本紙(ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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