2025年10月22日 NEWS DAILY CONTENTS

初の女性首相誕生、米欧メディアはどう伝えた? 「国内で賛否両論を呼ぶ人物」「社会を前進させてほしい」

21日、日本の憲政史上初の女性首相が誕生した。男性社会である日本に女性のリーダーが登場したことで米欧メディアも注目し、大きく報じた。多くは高市首相の経歴を紹介、安倍晋三元首相(2022年没)直系の保守思想から日本が右傾化するとの指摘もあった。ニューヨークタイムズとイギリスBBCはそれぞれ、日本における女性の社会進出の視点からレポートしている。

第104代の内閣総理大臣に就任した高市早苗氏(photo: 内閣広報室 https://www.kantei.go.jp/jp/terms.html)

「日本の女性にとってプラスになるだろうか?」NYタイムズ

19日付のニューヨークタイムズは、イギリスのマーガレット・サッチャー(2013年没)を崇拝する強硬保守派の政治家、高市氏について、「国内で賛否両論を呼ぶ人物であり、ガラスの天井を破ったことへの反応もさまざま」と紹介。サッチャー元首相やイタリアのメローニ首相ら保守派女性政治家と同様、高市氏は「女性の権利を損なうと批判される政策を推進してきた」と指摘。「社会における男女平等を阻むことで、この地位に就いた。大きな進展は期待できないだろう(若者支援団体ノー・ユース・ノー・ジャパンの能條桃子代表)」「ガラスの天井は破られたわけではない。小さな穴が開いただけだ(上智大学の三浦まり教授)」といった声を紹介。高市氏は同性婚や夫婦別姓に反対し、1947年に制定された「皇位継承は男子に限る」とする法律の変更にも反対している。

ニューヨークタイムズは高市氏が掲げた公約ー内閣の女性比率を、通常50%に近い水準を指す「北欧並み」に高めることーについても言及。21日発表の高市内閣に入閣した女性は2人、「北欧並み」は実現しなかった。高市氏はまた、ジェンダー平等活動家らが提唱する多様性クオータ制についても繰り返し拒否の姿勢を示している。

一方で、今後は独立した政治家として期待したいとする意見も。「女性だからといって特定の政策を実行しない理由を問うのは意味がない。自民党という政党全体が責任を負うべき(1980年代から高市氏を知る立憲民主党の辻本清美議員)」。高市氏の政策の多くに同意できないとしながらも「彼女自身が経験したのと同じ働き方や苦労を強いられることなく、多くの女性が政治とビジネスの双方に参加できるよう、社会を前進させてほしい(ダイバーシティコンサルティング会社イー・ウーマンの創立者、佐々木かをり氏)」といった声も取り上げている。

「歴史的瞬間、ただし注意点あり」イギリスBBC

21日付のイギリスBBCは、高市氏は女性問題に関して、「ジェンダー問題で芳しくない実績を持つ自国同様の姿勢を一貫して示している」とバッサリ。「日本の女性のエンパワーメントとジェンダー平等にとって素晴らしい機会になる」との期待は「非常に世間知らずな解釈」で、高市氏は「家父長制の擁護者」と、冷ややかに見る若い女性の声を紹介している。

保守強硬派の安倍氏の後継者であり、党首選では同氏の盟友で自民党重鎮の麻生太郎氏の支援を受けたこともあり、「既存の枠組みに真正面から挑んでいるわけではなく、男性と同じことを言っているに過ぎない」「彼女の成功は、現状に順応すべきだという考えを助長する。女性が共感しづらいと感じる」などと手厳しい反応が目立つ。

一方で、高市早苗氏の権力掌握は、女性の社会進出において「非常に意義深く、社会全体に広範な影響を与えるだろう(元大津市長の越直美氏)」とするポジティブな意見も。性別に基づく固定観念や期待が依然として残る中でも、「女性や少女が企業や社会でリーダーとして『目立つことが普通』だと感じられるようになる」との期待も併せて紹介している。

                       
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