■財源に国債を充てるのはもっとも安易な道
次の首相が誰になろうと、政権がどうなろうと、わかっているのは、国債発行による財政拡大は続くということだろう。立憲民主だけが「緊縮財政」を匂わせているが、ほかはすべて「積極財政」で、財源をほぼ考えない「物価対策」という給付金支給、減税をやろうとしているからだ。
となると、国債発行は際限なく続いていく。
つまり、円安は止まらず、物価は上昇を続け、スタグフレーションが進んでいく。
保守(右)だろうと、リベラル(左)だろうと、こと経済政策に関しては、目先しか考えず、もっとも安易な道を選んでいる。それが、最終的に国民生活を破壊してしまうことをわかっていない。
■「税は財源ではない、財源は国債」は“ブードゥ教”
まず、高市支持者および野党支持者のなかに、経済の“ブードゥ教”信者がいることを指摘しておきたい。つまり、トンデモ理論の信者で、たとえば「サナエノミクス」の危険性を指摘するコラム、記事を書くと、次のような理屈を振りかざして攻撃、非難してくるのだから心底悲しくなる。
「MMT(現代貨幣理論)によれば、財政赤字自体は問題ではない」
「自国通貨建てだからデフォルトしない」
「税は財源ではない、財源は国債」
「国債は国の借金だが国民の資産(政府の赤字は民間の黒字)」
「国家財政を家計と同じと考えるのは間違い」
このような考え、理屈は、すべて、現実無視の夢想としか言いようがない。また、高名な経済評論家が唱えた「ザイム真理教」などというものも、言わばコミックである。政府と財務省は1度たりとも緊縮財政をなどせず、ずっと赤字国債でまかなう放漫財政を続けてきている。よって、財務省解体デモなどというのは、カルト集団のデモと同じだ。
■まともな経済政策なら金利の引き上げが必要
物価対策は、言い換えればインフレ対策である。インフレ対策というのは、インフレの抑制であり、まともな経済政策では、中央銀行が政策金利を引き上げることが基本となる。つまり、「物価の番人」中央銀行が、まずこれをやらねばならない。
ところが、日銀は金利を引き上げられない。
アベノミクスという愚かな政策で、異次元の金融緩和を行い、その間、国債の大量発行による積極財政(=放漫財政)を行なってきたからだ。
この続きは11月6日(木)に掲載します。
本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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