在ニューヨーク日本国総領事館・大使公邸は2日、「一世に一代の逸材(once-in-a-generation talent)」と称賛される13歳のヴァイオリニスト、HIMARIのサロンコンサートを開催した。今年3月、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期公演で史上最年少のアジア人ソリストとして鮮烈なデビューを飾ったHIMARI。今回は、より近い距離で聴衆と向き合うアットホームなリサイタルとなった。

森美樹夫氏(NY日本国総領事館・大使公邸で撮影)
HIMARIは2歳半でヴァイオリンの勉強をスタート。数々の国際コンクールで優勝した日本が誇る若き才能だ。10歳で名門カーティス音楽院(ペンシルベニア州フィラデルフィア)に史上最年少で入学し、現在は世界的指導者アイダ・カヴァフィアン(Ida Kavafian)の下で学んでいる。
HIMARIがこれまでに受賞した主な国際コンクールは、リピンスキ&ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール(グランプリ)、アルトゥール・グリュミオー国際ヴァイオリンコンクール(第1位・特別グランプリ)、アンドレア・ポスタッチーニ国際ヴァイオリンコンクール(第1位・特別賞)、シェルクンチク国際音楽コンクール(第1位)、レオニード・コーガン国際コンクール(第1位)、モントリオール・ミニ・ヴィオリーニ2023(観客賞)など、数え上げたらキリがない。その実力は世界の音楽界に広く認められている。今年3月には、世界最高峰のベルリン・フィル定期公演ソリストとしてデビュー。ヴィエニャフスキの「ヴァイオリン協奏曲第1番」を見事に演奏し、聴衆を圧倒した。
今回のリサイタルでは、ブラームスの「ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 Op.108」、イザイの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第6番 ホ長調 Op.27-6」、ヴィエニャフスキの「ファウスト」の主題による華麗なる幻想曲 Op.20」の3曲を演奏。
共演ピアニストを務めたのはアイオワ州出身のチェルシー・ワン(Chelsea Wang)。ニューヨークタイムズで「優れた若手ピアニスト」と称され、カーネギーホール、ケネディセンター、ベルリン・コンツェルトハウスなど世界の名だたるホールで活躍してきた実力派だ。カーティス音楽院、ピーボディ音楽院を経て、現在はノースウェスタン大学の博士課程に在籍。カーネギーホールとジュリアード音楽院、ワイル音楽研究所が共同主催するアンサンブルコネクト(Ensemble Connect)のメンバーとしてニューヨークを拠点に演奏活動と音楽教育の両面で活躍している。

この日の注目は、HIMARIが使用した2挺のヴァイオリンだ。司会者からは、「通常、ヴァイオリニストが公演中に楽器を替えることはありませんが、今回はElgis製の1736年製と1741年製という2挺を使用します。後半のヴァイオリンは、HIMARIが今日で2日目の演奏。私たちにとっても新しい体験になるでしょう」と説明があった。
その言葉通り、後半に登場したヴァイオリンはまるで違う色彩を放ち、聴衆を魅了した。演奏の合間には、HIMARIが流暢な英語で挨拶をする場面もあった。丁寧に話す姿からは、13歳とは思えぬ落ち着きと品格がにじみ出ていた。演奏終了後、会場は鳴り止まない拍手とスタンディングオーベーションに包まれた。再びステージに立ち、アンコール曲を演奏しリサイタルを締めくくった。年齢を超え、音楽で語り、心を動かすHIMARI。その音色は、まさに“奇跡”と呼ぶにふさわしく、ニューヨークの春の夜に、静かに、そして力強く響き渡った。
取材・文・写真/藤原ミナ
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