2025年11月5日 NEWS DAILY CONTENTS

民主社会主義者で初、マムダニ氏が当選 | NY市長など特別選挙で民主党が勝利

4日投開票のニューヨーク市長選挙で、民主党選出のニューヨーク州下院議員、ゾーラン・マムダニ氏(34)が当選した。アメリカで初の「民主社会主義」を唱える大都市市長となる他、初のイスラム教徒、初の南アジア系の同市市長で、過去100年以上の市政史で最年少ともなる。「ニューヨークを住める町に」を訴え、若い有権者らを巻き込んだ選挙戦で歴史的な勝利を収めた。穏健派の前ニューヨーク州知事、アンドリュー・クオモ氏(67)を負かし、民主党の今後の在り方に一石を投じた。

9カ月間にわたり選挙ボランティアをしたというジャリル・スルタンさん(左)は従兄弟と勝利集会に駆けつけた(4日、ブルックリン / Photo: Keiko Tsuyama)

マムダニ氏は4日夜、ブルックリン・ダウンタウンの勝利集会で演説し、「この市はとうとう、あなた方のものになる」と宣言した。

マムダニ氏は、家賃や物価、教育費の高騰でニューヨークは「手の届く(アフォーダブル)」市ではなくなっており、富裕層が支配していると一貫して強調。多くの市民が住むレントスタビライズド(家賃安定アパートメント)の家賃を凍結する他、バス運賃や保育手当を無料化すると公約した。法人や富裕層に対する増税を財源とする計画だという。

これらの公約が「絵空事」「実現不可能」といったクオモ氏や民主党内からの批判もはねつけ、SNSを駆使。若い有権者が約10万人(マムダニ氏による)もボランティアとして、電話作戦や戸別訪問に奔走した。10月26日の「ニューヨークは売り物ではない」と題した選挙集会には、約1万5000人の支持者が集まり、近年の市長選挙では見られなかった「マムダニ旋風」を巻き起こした。

マムダニ氏は勝利演説で、「若いことやイスラム教徒であることで謝罪したりしない」とし、メンタルヘルスの問題を抱える人やトランスジェンダー、シングルマザーなどに優しい政策を主張、若い支持者から大歓声が上がった。弱者保護の姿勢に、物価高などの経済的な影響を受けている若い市民が同調していることを示した。

勝利集会に駆けつけたパキスタン系のジャリル・スルタン氏(14)は、投票権はまだないものの、9カ月間ボランティアを続けた。「イスラム教徒、ヒンドゥー教徒、キリスト教徒、ユダヤ人やあらゆる人種の代表となる初の市長となる。移民コミュニティーにとって歴史的な勝利だ」と話した。

ブルックリンの勝利集会に集まり、会場に入れずあふれる支持者ら(4日、ブルックリン / Photo: Keiko Tsuyama)

一方、トランプ大統領はマムダニ氏を警戒し、ニューヨーク市に対する180億ドルの連邦資金を凍結すると発言している。選挙結果について、「共和党にとって良くない」とコメントした。トランプ氏が大統領になってから初の選挙だったが、ニュージャージー州知事にマイキー・シェリル氏、バージニア州知事にアビゲイル・スパンバーガー氏と共に民主党が制覇。今回の結果は、2026年の中間選挙や28年の大統領選挙にも影響を及ぼす可能性が出てきた。

マムダニ氏は、インド出身の政治学者マフムード・マムダニ氏と映画監督のミラ・ナイル氏を両親に持ち、アフリカのウガンダで生まれ、7歳からニューヨークで育った。民主社会主義者を自称するバーニー・サンダース上院議員(無所属)らの影響を受けて、市長選に立候補した。今年2月の支持率は1%だったが、投開票日前に50%を超えた。

得票率は5日午前11時で、マムダニ氏が50.4%、クオモ氏が41.6%となっている(CNNによる)。

                                 文・取材 津山恵子

                       
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