米税関・国境警備局(CBP)が運営する入国審査優遇制度「グローバルエントリー(GE)」で、会員資格の取り消しが昨年初頭から急増している。2024年に資格を失った会員は1万7281人と前年比47%増に達し、今年に入ってからも同様の傾向が続く。理由の説明がないまま資格を剥奪された例も多く、利用者から困惑の声が相次いでいる。金融情報サイトのファイナンシャルアドバイザーが14日、伝えた。

GEは、頻繁に渡航する旅行者に対し、入国審査を迅速かつ簡便にする特典を付与するアメリカ政府の「信頼できる旅行者プログラム(Trusted Traveler Programs)」の一つ。同制度に含まれるTSAプレチェックは空港保安検査の専用レーンを利用できるが、GEが失効すると同特典も同時に無効となる。
CBPによると、24年5月時点で登録者は約1300万人と20年比83%増の過去最多を記録。一方で、同期間の資格取り消し件数は144%増のペースで拡大しており、新規登録数のほぼ2倍に達する見通しだ。
テキサス州在住の男性は、旅行翌月に「ステータスに変更があった」との通知メールを受け、CBPポータルを確認して初めて資格喪失を知った。提示された理由は「情報が不正確」だけで、具体的な根拠は示されなかった。3月に資格を失ったジョージア州の男性は、中国の通販サイトSheinで購入した商品が過去に偽造品の疑いで税関に差し押さえられた経験があり、それが原因ではないかと推測している。
CBPは既存会員の適格性を定期的に審査しているが、従来、資格の取り消しはまれで、例年の剥奪率は全体の約0.1%にとどまっていた。一般的な取り消し理由は、「刑事告発」「TSA検査場(セキュリティーチェック)での銃火器持ち込み」「入国時の農産物の無申告」などとされる。
CBPは資格取り消し理由の通知義務を負うが、多くのケースで記載がない、あるいは内容が曖昧なまま放置されている。資格を剥奪された者は異議申し立てが可能だが、剥奪が誤りだったことの証明が必要で、根拠が示されない状況では極めて困難だ。それでも、20〜23年に寄せられた異議申し立てのうち39%は決定が覆されたという。
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