政治的分断が深まるアメリカで、大学入試にも変化が起きている。名門大学の入試でいま重視され始めているのは「成績」や「課外活動」だけではない。自分と異なる意見にどう向き合い対話できるか、その姿勢が新たな評価軸として浮上。ハーバード大学やコロンビア、エモリー、ウェルズリー大学などは近年、出願者に対し「自分とは信念の異なる相手との論争体験」をテーマにしたエッセーの提出を求めるようになっている。ウォール・ストリート・ジャーナルが11月25日、伝えた。

「ディスアグリーメント・エッセー(disagreement essay)」と呼ばれるこの課題の導入は、保守派が名門大学を「自分と異なる意見を許容できないリベラルな集団思考の温床」と批判する中で広がっている。大学側は、学生が他者の見解をどの程度受け止め、建設的に対話できるかを見極める狙いがあるとしている。ニューヨーク大学(NYU)は出願者向けサイトで、分断の「“橋渡し役”になりたい学生を求めている」と明言。デューク大学は、昨年の「意見の一致または不一致」のいずれかを選べる形式から、今年は「大切に思う人と意見が食い違った経験と、そこから何を学んだか」を問う踏み込んだ内容に変更した。
入学コンサルタントは、エッセーで「成長」と「相互学習」を示すよう志願者に助言し、極端な対立や未解決の衝突については避けるよう勧めている。また、入学アドバイザーやインフルエンサーが、「保護者との議論は書かない(未熟さを示す)」「政治的意見は押し付けない(論争を招く)」「意外性のある題材を選ぶ」など、回答のコツをネット上で大量に発信している。
入試エッセーの設問は、時代の空気を反映する傾向がある。大学進学コンサルタントらによると、数年前のブラック・ライブズ・マター(BLM)運動以降は社会正義や多様性を問う設問が増え、#MeToo運動の時期にはフェミニズムやジェンダー平等がテーマとなった。新型コロナウイルス禍では、「コミュニティー」や「孤立」を扱う問いが目立ったという。
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