アメリカの世界覇権を支えているのは、経済力、軍事力などのハードパワーだけではない。自由と平等に基づく民主社会と、そこで育まれる文化や娯楽(音楽や映画など)のソフトパワーも重要だ。
しかし、トランプ時代になって、その衰えが顕著になった。アメリカ発のハリウッド映画もポップミュージックも、いまや世界で流行らなくなってきた。
とくに日本は、洋楽離れ、洋画離れが進んでいる。
今年のビルボードはK-POPが席巻
いまや、アメリカ本国でさえ、ポップミュージックは海外勢、とくに韓国のK-POPに席巻されている。今年のビルボードホット100のチャートを見れば、Stray Kids(ストレイキッズ)やHUNTRIX(ハントリックス)などの楽曲が、テイラー・スイフトなどを上回っている。
とくにネットフリックスのアニメ『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』に登場した3人グループHUNTRIXの『Golden』は、ビルボードホット 100チャートで8週連続1位を獲得して空前の大ヒットとなった。
ハロウインは彼女たちのコスチュームで溢れ、感謝祭恒例のNYのメイシーズのパレードにも登場した。
本国アメリカでもこうだから、海外でもアメリカのポップミュージックの地位低下は著しい。とくに日本では、このところ「洋楽」(英語楽曲)がまったくチャートインしなくなった。
トップ100に洋楽がゼロという「洋楽離れ」
もうかなり前から、日本では「洋楽離れ」ということが言われてきた。コロナ禍後は、それが顕著になった。日本のビルボードホット100では、10年ほど前までは洋楽が20曲ぐらいは入っていた。それが、近年はほとんどゼロである。
昨年、ROSÉ & ブルーノ・マーズの『APT.』が、11月1週目に1位を獲得したが、これは2013年5月のザ・ウォンテッド『グラッド・ユー・ケイム』以来のことだった。
このようなことは、半世紀前に青春を送った私には信じられないことだ。当時は、毎週にようにアメリカのヒットチャートを追いかけ、ビーチボーズからビートルズまで、ラジオを通して聴いていた。
なぜ、洋楽は聞かれなくなったのか?
主流メディアで取り上げられなくなった。ネットによって国に関係なく楽曲を楽しめるようになった。ストリーミングサービスが普及して音楽の聴き方が変わった。J-POP、
K-POPの人気高騰。若者の海外離れ。アメリカへの憧れの消失。—-など、いろいろ言われているが、どれもその通りで、原因は複合的と思える。
「洋楽離れ」は日本だけの現象ではない
日本で顕著な「洋楽離れ」だが、じつはこれは世界的な現象だ。世界の音楽市場は、以前と大きく変わり、英語楽楽曲の優位性が低下し、K-POPやラテンミュージックなどが世界中で台頭している。
このことを裏付けるのが、Spotify(スポティファイ)などのストリーミング配信業者の集計データだ。再生回数上位1万曲における英語楽曲のシェアは年々減っている。
たとえば、メキシコでは、アメリカとはまったく異なり、カントリーはほとんど聴かれず、ヒップホップ系もトップ・ラティーノなど限られたジャンルだけになっている。
スポティファイのデータによると、世界のポップミュージックのアーティストをグルーピングすると、アメリカのポップアーティスト、中南米のラテンアーティストという大きなクラスターがあり、その間に、K-POPアーティストやユーロアーティストが存在する。
もはや、アメリカ発のポップミュージックが世界中で流行した時代は終わったのだ。
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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