グローバル・ガバナンス・イニシアティブとは?
SCOプラスの天津での会議で、習近平が提起したのは、「グローバル・ガバナンス・イニシアティブ」(Global Governance Initiative GGI)という構想である。
これまで、習近平は3つの世界指導戦略を公表してきた。1番目は、2021年に提起された「グローバル発展イニシアティブ」(Global Development Initiative: GDI)、2番目が2022年の「グローバル安全保障イニシアティブ」(Global Security Initiative: GSI)、3番目が2023年3月の「グローバル文明イニシアティブ」(Global Civilization Initiative: GCI)である。
今回の「CGI」は、これらに基づいてうえに、さらに「ガバナンス」を加え、中国がイニシアティブを発揮して国際社会をまとめるというのだ。
CGIを貫くのは、習近平がこれまでで提唱してきた「人類運命共同体」で、中国がこの実現をリードするという。そのために、主権平等、国際法治、多国間主義、人間本位、行動の道筋の5つの概念を「5大核心理念」として、世界をまとめていくという。
中国が提起するCGIは、言葉だけを見れば「素晴らしい」ものである。しかし、これを言うのが自由、人権、平等、民主制を認めない強権の独裁者が言うのだから、言葉通りには受け取れない。ただし、CGIが中国の覇権奪取戦略であることは間違いない。中国は、間違いなく世界を支配しようとしているのだ。
中国は「世界平和の建設者」となると宣言
中華人民共和国 福岡総領事館のウェブサイトに掲載されている『グローバル・ガバナンス・イニシアティブを実践し、人類の素晴らしい未来を共に創る』(2025.10.10)から、要点部分を転載する。
《グローバル・ガバナンス・イニシアティブは、中国文明の知恵に根ざしており、グローバル・ガバナンスが目下直面する課題を的確に捉え、グローバル・ガバナンスは「誰が、どのように、誰のためにガバナンスを行うのか」という命題に体系的に答えるものである。》
《イニシアティブは5つの中核的理念を包含しており、主権平等の遵奉を最も重要な前提とし、国際的な法の支配の遵守を根本的保障とし、多国間主義の実践を基本的路線とし、人間本位の堅持を価値志向とし、行動重視を重要原則とする。5つの主張は、「平和共存」「小異を残して大同につく」という中国外交の優れた伝統を継承し、それを発展させ、国連憲章の趣旨及び原則と同じ流れを汲み、「共に話し合い、共に建設し、共に分かち合う」というグローバル・ガバナンス観のエッセンス・要義を体現し、圧倒的多数の国々の共通の期待に沿ったものである。》
《グローバル・ガバナンス・イニシアティブの指針の下、中国は引き続き果たすべき国際的責任をしっかりと履行し、世界平和の建設者、グローバル発展の貢献者、国際秩序の擁護者、公共財の提供者で揺るぎなくあり続けるとともに、各国と共に国連の理想を守り、多国間主義の精神を発展させ、革新と協力の力を結集し、持続的な平和と共通の繁栄に満ちた素晴らしい未来を共に切り開いていく。》
蚊帳の外に置かれたニクソン電撃訪中の記憶
はたして中国は、アメリカに代わる世界覇権国になれるのだろうか? トランプというとんでもない大統領が出現した以上、これは、世界が直面する大問題である。まして、中国の圧力に直面している日本にとっては、国家の存続に関わる大問題である。
ところが、政治家にも国民にも、危機意識がない。ないから、最悪の事態に陥らないためにどうするかという戦略がない。アメリカの言うがままに防衛費を増額させ、中国に対しては、高市応援団の声を受けて発言撤回など絶対しないという姿勢を貫いている。
そこで想起するのは、過去に日本がアメリカにハシゴを外されたことがあることだ。1972年、ニクソンは中国を電撃訪問し、米中共同宣言を発表した。ところが、このことは日本にとって寝耳に水で、「もっとも重要な同盟国」でありながら、なにも知らされていなかった。
トランプはすでに「G2」発言をしている。来年は北京を訪問して習近平と首脳会談を行い、」その後、習近平を国賓としてアメリカに招く。日本は蚊帳の外になる可能性が高い。
1日も早いトランプの失権を願うばかり
覇権国家の条件として、(1)圧倒的な経済力(2)強力な軍事力、(3)通貨・金融力(4)文化・価値観によるソフトパワーが挙げられている。これに、AI時代だから(5)情報力を加えて、この5つの面から中国を見ると、まだいずれもアメリカに劣っていると言える。
しかし、すべての面で、中国はアメリカとの差を詰めてきている。 はたして、近い将来、そのパワーはアメリカと並ぶのか? 並んで逆転するのか?
もし、米中逆転が確実な未来なら、トランプはアメリカを覇権喪失国にさせた戦犯ということになる。現在、私が思うのは一日も早く、トランプが失権して、アメリカが自由と民主主義世界の盟主に戻って欲しいということだ。
これ以上、「パクス・アメリカーナ」が衰退すると、日本は「漂流国家」になってしまう。そして、衰退の一途をたどる。(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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