2月8日に行われたスーパーボウルのハーフタイムショーで、世界中の視線を一夜にして集めたブルックリンの小さなバーがある。ウィリアムズバーグにある「トニータ(Toñita)」こと、「カリビアンソーシャルクラブ(Caribbean Social Club)」だ。

パフォーマンスを披露したのは、プエルトリコ出身のバッド・バニー(Bad Bunny)。レディー・ガガ(Lady Gaga)やリッキー・マーティン(Ricky Martin)といったゲストも登場し、会場の熱気は最高潮に達した。その華やかな舞台の中で再現されたこのバーの存在が、なぜこれほどまでに人々の心を打ったのか。
編集部が実際に現地「トニータ」を訪れて分かったのは、そこが単なるローカルバーではないという事実だった。
ブルックリンの小さなバーを訪れて分かった、 バッド・バニーのショーの意味
プエルトリコ出身のバッド・バニーは、英語が主流のアメリカ音楽界で、ほぼ一貫してスペイン語で歌い続けてきたアーティストだ。それでも世界のチャートを席巻し、トップに立った。そして今回、スーパーボウルのハーフタイムショーという歴史的な舞台で、彼は改めて自分のルーツを堂々と掲げた。
ステージ上に再現されたのは、ウィリアムズバーグのカリビアンソーシャルクラブ。地元では「トニータ」の愛称で親しまれる、1974年創設のプエルトリコ系コミュニティーの拠点だ。
木曜の午後5時ごろ、実際に訪れてみた。店内にはプエルトリコの国旗が掲げられ、バッド・バニーの曲が爆音で流れている。スーパーボウルのハーフタイムショーに登場したソーシャルクラブのオーナのマリアさんも静かに奥に座って優しく微笑んでいた。

人々がまるで家に帰ってくるかのように、次々と立ち寄って気ままに過ごす場所。楽しみ方は人それぞれ、ビリヤードを楽しむ人、1人で静かに読書をしたり、会話を楽しんだり、食事をする人…。初めて訪れた日本人の私にも驚くほどみんな温かかった。ビールをご馳走してくれたフレンドリーな常連さんもいた、また、音楽を制作しているという女性は名刺を渡してきた。そんな感じでみんな自然とつながる。スペイン語も英語も拙い日本人の私でさえ、一瞬で溶け込める不思議な空気だった。
「ここはお金を稼ぐための場所じゃない。みんなが集まるための場所」 トニータの歴史と存在意義
トニータは、もともと近所の野球チームのメンバーが集まる“会員制のたまり場”として始まった。2000年に正式にリカーライセンスを取得し、地域に開かれたバーへと形を変えるが、本質は変わっていない。再開発が進み、街並みが大きく変わる中でも、トニータは何度も高額な買収オファーを断ってきた。
「ここはお金を稼ぐための場所じゃない。みんなが集まるための場所」
そう語るマリアさんの言葉通り、店内には商業主義とは違う時間が流れている。壁に掲げられたプエルトリコの国旗、スピーカーから流れるサルサ。料理は自然に分け合われ、3ドルのビールよりも価値があるのは、そこに生まれる会話と安心感だ。

20世紀初頭、ラテン系移民にとってソーシャルクラブは命綱だった。仕事探し、言語の壁、住居の確保、差別への対応。それらを支えたのが「同郷ネットワーク」だ。情報を共有し、困ったときは助け合い、文化や言語を守る場所だった。

ニューヨークのような巨大都市で生きていくには、「自分がどこから来たのか」を共有できる空間が精神的な支えになる。トニータは、まさにその“生きた歴史”だ。半世紀にわたり、世代を超えて人々をつなぎ続けてきた。今回のハーフタイムショーが世界に示したのは、単なるローカルバーの紹介ではない。離れていても文化を守り続ける人々の誇りだった。
なんと、バッド・バニーの日本公演が3月7日に決定
なお、バッド・バニーの日本でのパフォーマンスも決定している。3月7日、東京近郊で開催されるSpotify主催の特別公演「Billions Club Live」に出演する予定だ。2025年Spotify年間ランキングで〈世界で最も再生されたアーティスト〉1位を獲得し、史上最多となる4度目のトップを記録した彼にとって、アジアおよび日本で初のパフォーマンスとなる。公演は招待制(Invite Only)で、Spotifyで10億回以上再生された楽曲の功績を称える一夜限りの特別イベント。世界的スターがいよいよ日本の観客の前に立つ。
Caribbean Social Club
244 Grand St., Brooklyn
営業時間
木・日:15:00–1:00AM
金・土:15:00–3:00AM
取材・文・写真/藤原ミナ
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