2026年2月20日 NEWS DAILY CONTENTS

スーパーボウルで一夜にして世界的話題に、バッド・バニーが再現したNY・ブルックリンの「名物バー」とは?

2月8日に行われたスーパーボウルのハーフタイムショーで、世界中の視線を一夜にして集めたブルックリンの小さなバーがある。ウィリアムズバーグにある「トニータ(Toñita)」こと、「カリビアンソーシャルクラブ(Caribbean Social Club)」だ。

ハーフタイムショーにも登場したマリア・アントニア・ケイ(María Antonia Cay、通称トニータ)さんは、いつもカウンター席に座っている。写真をお願いすると笑顔で応えてくれた

パフォーマンスを披露したのは、プエルトリコ出身のバッド・バニー(Bad Bunny)。レディー・ガガ(Lady Gaga)やリッキー・マーティン(Ricky Martin)といったゲストも登場し、会場の熱気は最高潮に達した。その華やかな舞台の中で再現されたこのバーの存在が、なぜこれほどまでに人々の心を打ったのか。

編集部が実際に現地「トニータ」を訪れて分かったのは、そこが単なるローカルバーではないという事実だった。

ブルックリンの小さなバーを訪れて分かった、                           バッド・バニーのショーの意味

プエルトリコ出身のバッド・バニーは、英語が主流のアメリカ音楽界で、ほぼ一貫してスペイン語で歌い続けてきたアーティストだ。それでも世界のチャートを席巻し、トップに立った。そして今回、スーパーボウルのハーフタイムショーという歴史的な舞台で、彼は改めて自分のルーツを堂々と掲げた。

ステージ上に再現されたのは、ウィリアムズバーグのカリビアンソーシャルクラブ。地元では「トニータ」の愛称で親しまれる、1974年創設のプエルトリコ系コミュニティーの拠点だ。

木曜の午後5時ごろ、実際に訪れてみた。店内にはプエルトリコの国旗が掲げられ、バッド・バニーの曲が爆音で流れている。スーパーボウルのハーフタイムショーに登場したソーシャルクラブのオーナのマリアさんも静かに奥に座って優しく微笑んでいた。

カリビアン・ソーシャル・クラブ(Caribbean Social Club)の入口に近づくと、中からバッド・バニー(Bad Bunny)の音楽が聞こえてくる

人々がまるで家に帰ってくるかのように、次々と立ち寄って気ままに過ごす場所。楽しみ方は人それぞれ、ビリヤードを楽しむ人、1人で静かに読書をしたり、会話を楽しんだり、食事をする人…。初めて訪れた日本人の私にも驚くほどみんな温かかった。ビールをご馳走してくれたフレンドリーな常連さんもいた、また、音楽を制作しているという女性は名刺を渡してきた。そんな感じでみんな自然とつながる。スペイン語も英語も拙い日本人の私でさえ、一瞬で溶け込める不思議な空気だった。

「ここはお金を稼ぐための場所じゃない。みんなが集まるための場所」                トニータの歴史と存在意義

トニータは、もともと近所の野球チームのメンバーが集まる“会員制のたまり場”として始まった。2000年に正式にリカーライセンスを取得し、地域に開かれたバーへと形を変えるが、本質は変わっていない。再開発が進み、街並みが大きく変わる中でも、トニータは何度も高額な買収オファーを断ってきた。

「ここはお金を稼ぐための場所じゃない。みんなが集まるための場所」

そう語るマリアさんの言葉通り、店内には商業主義とは違う時間が流れている。壁に掲げられたプエルトリコの国旗、スピーカーから流れるサルサ。料理は自然に分け合われ、3ドルのビールよりも価値があるのは、そこに生まれる会話と安心感だ。

連邦議会やニューヨーク市消防局(NYPD)からの表彰状が所狭しと飾られた壁。この場所が半世紀にわたり地域に果たしてきた役割を物語っている

20世紀初頭、ラテン系移民にとってソーシャルクラブは命綱だった。仕事探し、言語の壁、住居の確保、差別への対応。それらを支えたのが「同郷ネットワーク」だ。情報を共有し、困ったときは助け合い、文化や言語を守る場所だった。

店内で存在感を放つビリヤード台。自然とプレイが始まり、夕刻過ぎるとさらににぎやかになる

ニューヨークのような巨大都市で生きていくには、「自分がどこから来たのか」を共有できる空間が精神的な支えになる。トニータは、まさにその“生きた歴史”だ。半世紀にわたり、世代を超えて人々をつなぎ続けてきた。今回のハーフタイムショーが世界に示したのは、単なるローカルバーの紹介ではない。離れていても文化を守り続ける人々の誇りだった。

なんと、バッド・バニーの日本公演が3月7日に決定

なお、バッド・バニーの日本でのパフォーマンスも決定している。3月7日、東京近郊で開催されるSpotify主催の特別公演「Billions Club Live」に出演する予定だ。2025年Spotify年間ランキングで〈世界で最も再生されたアーティスト〉1位を獲得し、史上最多となる4度目のトップを記録した彼にとって、アジアおよび日本で初のパフォーマンスとなる。公演は招待制(Invite Only)で、Spotifyで10億回以上再生された楽曲の功績を称える一夜限りの特別イベント。世界的スターがいよいよ日本の観客の前に立つ。

Caribbean Social Club
244 Grand St., Brooklyn
営業時間
木・日:15:00–1:00AM
金・土:15:00–3:00AM

取材・文・写真/藤原ミナ

                       
合わせて読みたい記事
RELATED POST