ニューヨークの市長選で「市バスの無料化」を公約の一つに掲げたマムダニ市長。無料化はいまだに実現していないが、市長の公約を先取りしたかのように、バスの無賃乗車が増加している。地元ニュースサイトのゴッサミストが8月3日、伝えた。

無賃乗車をすればするほど、その代償は市民に返ってくる(photo: 本紙)

運賃収入は前年同期比3100万ドル減少

ニューヨーク州都市交通局(MTA)が先週発表したところによると、地下鉄や通勤鉄道の運賃収入は増加したものの、6月のバス有料乗客数は前年同月比で約8%減少した。マムダニ市長の就任後6か月間、MTAがバス利用者から徴収した運賃は、2025年上半期と比較して3100万ドル減少。MTAのジャノ・リーバー会長は、マムダニ市長の選挙公約が逆効果になっているとの見方を示した。

リーバー氏は、運賃を支払わずに乗車する人々の多くは支払う余裕があるとし、それは「自分ほど経済的に恵まれていない他の人々に責任を転嫁することになる」と述べた。また、運賃を支払う人が減れば減るほど、「MTAはその差額を補填するために運賃を引き上げざるを得なくなる可能性がある」と懸念を示した。

ブロンクス在住のブレンダ・チャールズさん(64)は先週、外出できない友人を助けに行く途中、ハーレムでM2バスに無賃乗車した。彼女はバスが無料ではないことを承知している。また、MTA職員に捕まれば罰金を科されるリスクがあることも理解しているが、乗るたびに運賃を支払う余裕はないと話す。「普段はちゃんと払っています。OMNYカードも持っていますが、ただ、かなり出費がかさむんです」とチャールズさん。特に1日に3、4カ所も移動すると、「かなりの額になる」という。

市長には公約実現する権限なし

MTAのバス運転手は、2008年に乗客に運賃の支払いを求めようとした際に殺害された事件を受けて締結された労働協約に基づき、運賃の徴収を行っていない。MTAの推計によると現在、バス利用者の約半数が運賃を支払っていない。しかし、一部の支援団体は長年にわたり取り締まりの強化が事実上「貧困を犯罪化すること」につながると懸念を表明してきた。   

MTAは市ではなく州によって運営されているため、市長がバス無料化の公約を実現する権限はない。それにもかかわらず、マムダニ氏は公約に掲げた。マムダニ氏の広報担当、ジェレミー・エドワーズ氏は、「不正乗車は長年にわたり根深い問題となっており、バス運賃を支払う余裕のない人々がいるという事実は、ニューヨーク市の生活費高騰の危機を浮き彫りにしている。まさにこれが、マムダニ市長が運賃無料制度を推進している理由だ」と市長の公約を擁護している。