2018年6月、番組撮影のため滞在していたフランス東部のホテルで自死したシェフでフードジャーナリストのアンソニー・ボーデイン(享年61)の若き日を描いた新作映画「Tony(トニー)」が8月7日、ニューヨークで公開される。それに先駆け飲食業界関係者向けの試写会がミッドタウンで行われた。地元ニュースサイトのゴッサミストが同5日、伝えた。

厨房から見た若きボーデイン
物語の多くは1970年代、マサチューセッツ州プロビンスタウンのシーフード店の厨房で展開する。経験の浅いボーデイン役のドミニク・セッサが、素手でカキを持ち、小さなナイフで殻を開けようとする場面には、観客から指を切るのではないかと緊張の声が上がった。
映画は、ボーデインの回想録「キッチン・コンフィデンシャル」の数章を基にしたフィクション。マット・ジョンソン監督は、慌ただしい厨房の空気や、他に居場所を見つけにくい人々が飲食業界に集まる姿を描いた。市内の飲食店従業員らは、業界の実情を多く捉えていると評価する一方、伝記映画らしいきれいなまとめ方には「少しくさい」との指摘もあった。
試写会の後、ポップアップ店を運営するローワン・スペンサーさんは、職を得るため履歴書を誇張する主人公に共感。厨房では仲間を失望させたり、営業を台無しにしたりすることが大きな緊張につながると語った。作中では同僚が営業中にコカインを勧め、ヘロイン使用で遅刻するなど薬物問題も登場するが、ボーデイン本人の薬物依存や心の不調には深く踏み込まず、語り手としての才能が育つ青春物語に重点を置いている。
Momofuku Noodle Barの料理長パブロ・ビダルさんは、無口な人、気難しいが知識豊富な人など、厨房に集う多様な人物像がリアルだと評価。Nami Noriのシェフ兼共同経営者ジハン・リーさんは、失敗や遅刻を重ねた若い頃、上司から才能を認められ叱咤された経験を、劇中の厳しくも温かな指導に重ねた。その言葉で目を覚まし、料理を仕事にすると決めたという。映画は厨房の危険、規律、仲間への責任、師弟関係を通じ、ボーデインの料理人人生の原点を映し出している。

大の日本びいきだったボーデイン
ボーデインは大の日本びいきとしても知られ、テレビの旅番組「Parts Unknown」や「No Reservations」で東京、大阪、北海道、沖縄などをたびたび紹介。「残りの人生、一つの都市でしか食事ができないなら東京を選ぶ」と記すほど、東京の食文化を愛していた。また、初めて東京を訪れた経験を「世界の見方が一変した」と振り返っている。
日本での公開予定は?
全米では8月21日から公開規模を拡大する予定。日本公開は未定。
















