連載534 山田順の「週刊:未来地図」株価は永遠に上がり続けるのか? いま蘇る「大恐慌」の教訓(中2)
『学校で教えない大恐慌・ニューディール』は必読
次が、私が最近読んだ大恐慌に関する本のなかで、お勧めしたい本の一覧である。
『アメリカ 自由と変革の軌跡―建国からオバマ大統領誕生まで 単行本』(デーヴィド・Jルー、日本経済新聞出版、2009)
『世界大恐慌―1929年に何がおこったか』(秋元英一、講談社学術文庫、2009)
『世界恐慌 経済を破綻させた4人の中央銀行総裁』(上)(下)(ライアカット・アハメド、筑摩書房、2013)
『大恐慌のアメリカ』(林敏彦、岩波新書、2003) *この4冊は、大恐慌の一般的な理解を深めるためには最適。
『アメリカ大恐慌―「忘れられた人々」の物語』(上)(下)(アミティ・シュレーズ、NTT出版、2008)
『学校で教えない大恐慌・ニューディール』(ロバートP. マーフィー、マーク J. シェフナー ほか、大学教育出版、2015)
*これまでの大恐慌に関する見方を一変させてくれる2冊。政府が市場に介入しすぎると、経済が死んでしまうということがよくわかる。
『大暴落1929』(ジョン・K・ガルブレイス、日経BPクラシックス、2008)
『ブラックスワン回避法』 (マーク・スピッツナーゲル、ウィザードブックシリーズ、2016)
*この2冊で、金融システム、株式市場がどういうものか、そして、なぜ、暴落が起こるのか、理解を深められる。
直接の原因は「関税引き上げ法案」に!
大恐慌と言えば、「暗黒の木曜日」(Black Tuesday:ブラックサーズデー)である。「大暴落」(Great Crash)と呼ばれた最初のクラッシュが起こった日、1929年10月24日の木曜日をこう呼んでいる。この後、25日「ブラックフライデー」、28日「ブラックマンデー」、29日「ブラックチューズデー」と続き、とくに28日の壊滅的な下落が、その後の大恐慌への入り口となった。
この株価暴落の直接の原因は、1930年6月7日に制定された「スムート・ホーリー法」(Smoot-Hawley Tariff Act:1930年関税法)にあった。この法案は、2万品目以上の輸入品に関するアメリカの関税を引き上げるもので、約2年間にわたり審議されてきた。
NYダウは、「ブラックサーズデー」を迎える前まで、6年間上がり続けていて、株価は約6倍になり、1929年9月3日に、当時の市場最高値381.17ドルを付けた。ただし、関税法案の審議過程で、上下を繰り返しながらの上昇だった。
最初の大きな下落があったのは、1928年12月7日で、「ニューヨーク・タイムズ」が、下院歳入委員会の小委員会で関税に関する公聴会が開かれると報じると、NYダウは3.12%下落し271.05ドルを付けた。
しかし、株価はすぐに回復した。関税法案はまだできておらず、成立する見通しが立たないという見方が大勢だったからだ。そのため、NYダウは年末までに300ドルに上昇し、翌1929年3月まで順調に上げた。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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