
礼儀正しいことで知られる日本で、客による迷惑行為、カスタマーハラスメント(カスハラ)が横行している。26日、ニューヨーク・タイムズが報じた。
高級店では店員が深々と頭を下げ、レストランではウェイターが最上級の敬語を使う。ホスピタリティー大国、日本には「お客様は神様」という言葉さえある。その分、求めるサービスのスタンダードは高く、電車が少し遅れても謝罪を受けることに慣れている人々はやり過ぎてしまう。これがカスハラにつながる。日頃の鬱憤を晴らしていると指摘する専門家もいる。
例えば、補助席に座らされたことに腹を立て、バスの運転手に25分間も悪口雑言を浴びせた客。SNSに投稿されて、バイラルになった。トッピングの追加注文を受けないと怒り、丼の中に爪楊枝500本をぶち込んだラーメン店の客もいる。
労働省の調査では労働組合員の2人に1人がカスハラを受けたと回答。人手不足のおり、企業は客の不適切な行動を戒めるサインを掲示する、名札の表示を変えるなど、こぞってカスハラ対策を開始。かつては「客の苦情は社員が悪いから」と言っていたJR東日本も社員の心のケア支援を始めた。
政府も対策に乗り出した。2022年、「SNSに投稿するなどと脅す」「店内で大声で叫ぶ」などカスハラに該当する行動を示したガイドラインを発表。昨年末には、カスハラを行った客の宿泊を拒否できるよう、1948年に成立した法律を改正した。労働組合も、従業員をカスハラから保護することを雇用主に義務付ける法律の制定を求めている。
東京から北へ2時間程度の温泉宿。客はチェックイン時間の30分前に到着。「車の中で待つように」とのサインを見て、逆上し怒鳴り散らした。最後は専務が宿の入り口の路上に土下座して謝った。このことが報道されると、ロビーの広さや決まりを非難する電話がかかってきたという。土下座した専務の田中さんは「サービスを提供する従業員に対しても思いやりを」と話している。
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