ブルックリンのマッカレンパークに現れた、とある「壁」がこの夏若者を騒がせた。それぞれの名前が書かれたポラロイド写真と、自己紹介カードが並ぶこの壁は「Love Wall」という企画で、「もっとシンプルに恋愛ができないか?」とニューヨーク在住のバイシュナビ・セセッティ(Vaishnavi Sesetty、23)さんとサイラス・ベルソア(Cyrus Belsoi、25)さんが手がけたもの。
SNSでの口コミで広がり、数々のローカルメディアにも取り上げられ、マッチングアプリでの出会いが主流となりつつある中でのセンセーショナルな話題となった。

◆ アプリが主流になるも「スワイプ疲れ」
「Tinder」「Bumble」「Hinge」今や出会いの場として欠かせないマッチングアプリだが、日常に根付きすぎたせいか「スワイプ疲れ」(スマホの画面上で出てくる相手を左右にスワイプして、Yes / Noを選ぶ)といった言葉まで生まれる昨今。しかもニューヨークは先日「デートするのに最悪の街」という統計も取られたりと、シングルにとっては過酷な時代に突入してきたともいえる(苦笑)。
◆「恋愛が持つ本来の楽しさを取り戻してほしい」
そんななか突如現れた「Love Wall」。25ドルを支払うと、ストリートフォトグラファーのボブ(Bob)さんがポラロイドカメラで顔写真を撮影してくれ、その写真を自己紹介をつづった「キューピッドカード」と一緒に壁に貼る。そこで気になった人がいれば、後日その相手を連絡を取ることができるというものだ。

(写真提供:Pique)
「週末に何度かこのイベントを開催して、700人の人が『Love Wall』を使ってくれましたね。壁を通しての出会いのほか、この場所に立ち寄ったことから出会い、話しかけたところからデートに発展した例もありました。一度立ち止まって、周りに何があるか見てみる。より人間的に恋愛ができるアプローチはないか?というところから生まれたんです」

(写真提供:Pique)
こう話すのは発起人の1人バイシュナビさんで、実はこの2人は2年前からマッチングアプリ「Pique」を運営している。「エンドレスに『Hi』『How are you』を送り続けないといけないようなアプリに満足できていなくて、何か違った方法で恋愛にアプローチできないか? ということで立ち上げました。ゲームにようにスワイプしたり、アマゾンで品定めをしているような感覚で愛を探してほしくない」と、スワイプカルチャーと逆をゆく発想でアプリを作ったそう。
利用者には「好きな色は?」など簡単な質問を毎日投げかけ、答えの相性から「類似スコア」の高い6人の相手とマッチするという仕組みを生み出した。「アプリとイベントは全く違うアプローチだからこそ面白い。僕たちはキッチンにいるシェフのようなもので、2つの素材を調理しているんです(笑)。恋愛が持つ本来の楽しさを取り戻してほしいですね」と、サイラスさん。

マッチングアプリのアクティブユーザー層、そしてデジタルネイティブでもある彼らが「リアル」に価値を見出し、それに人々が応えた今回のイベント。今後も日本でいう街コン、合コンのような対面イベントを予定しているというので、盛り上がりに期待したい。
ちなみに、「デートするのに最悪な都市」でのライフハックを2人に聞いてみたところ、バイシュナビさんは「オープンマインドに」、サイラスさんは「コレはこういくべきだというプレッシャーは捨てろ」とのことだ。
取材・文/ナガタミユ
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