今年12月、ユネスコの無形文化遺産に日本の「伝統的酒造り」が登録された。今後さらに日本酒への期待が高まりそうな中、ニューヨークから酒文化を盛り上げる人々の声を聞いた。

◆ そもそも「無形文化遺産」とは?
無形文化遺産とは祭りや芸能、伝統工芸技術、社会的慣習など、形のない「生きた文化」の保存を目的に2006年に始まったもので、今回の登録が23件目。伝統的酒造りの他には能楽や人形浄瑠璃文楽、和紙などがあり、食関連では「和食」が13年に登録されている。
そして和食の登録以降、日本文化への注目が高まり、和食文化の中核でもある日本酒人気が海外でも急上昇。だが、国内では職人や技術の継承も課題となっているため、今回の登録を通して国内外での認知度を高め、後継者育成や技術保存の推進にも期待がかかっている。
◆ ニューヨークから「喜びの声」
無形文化遺産への登録はニューヨークで酒カルチャーに従事する人々にとってもうれしいニュースとなった。
日本の獺祭をライバルに「獺祭 Blue」でアメリカ進出を果たした「旭酒造」会長の桜井博志さん、またブルックリンで若者からも絶大なる人気を誇る、カジュアルな日本酒カルチャーの先駆者「Kato Sake Works」のオーナー加藤忍さん、そして「ニューヨーク・メッツ」のオフィシャルスポンサーとしても知られる「Takara Sake USA」からもコメントが寄せられた。
「より良い酒を未来を」
– 旭酒造 –
日本でそしてアメリカ・ニューヨークで酒を造っている者として、日本の「伝統的酒造り」のユネスコ無形文化遺産登録に感謝しております。ただ、「伝統」という言葉はもろ刃の剣で、ともすれば「伝承」になってしまい、われわれは進歩を忘れてしまいがちです。営々と長い歴史の中で「手間」をかけ「工夫」をしてより良い酒を造り上げてきた先人の努力に頭を下げるとともに、その思いをわれわれも引き継ぎ、少しでもより良い酒を未来の若者に遺していきたいと思います

「酒造業界の諸先輩方に深く感謝」
– Kato Sake Works –
つい先日、伝統的酒造りがユネスコに登録されたという吉報が、遠くニューヨークまで伝わってきました。日本酒ファンの一人として、世代を超えて受け継がれてきた日本の酒文化が世界に認知されることを、とてもうれしく思います。アメリカでも近年、「サケ」が盛り上がっていると聞きますが、ブルックリンの片隅で細々とお酒を造らせていただいている身としては、日本の伝統を世界に広め、市場を開拓してくださった酒造業界の諸先輩方に深く感謝するとともに、この酒文化をさらに盛り上げていくための一助となることを願い、乾杯したいと思います。

「アメリカで酒文化を普及させる活動の追い風に」
– Takara Sake USA –
今回「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことは、ここアメリカで40年以上にわたって日本の酒造りの本質や技術を培って酒造りをしている私たちにとっても、大変喜ばしいニュースです。アメリカで酒文化を普及させるという私たちの活動の追い風になると捉えており、このニュースによって、日本から輸入している日本酒や焼酎も含めて、アメリカの方々にもっと酒文化への興味を持っていただけると信じています。

文/ナガタミユ
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