キンデ、ビエールだ!①
あるエチオピア人と仲良くなった時の話。ただし、仲良くなったとは言っても、残念ながらエチオピアという国へ行ったわけではなく、では何処で出会ったかというと、それはパリのあるブラッセリーにいたときのこと。歴史あるレピュブリック広場に面する大通り沿いに、これまたなかなか歴史のある大きなブラッセリーが、当時住んでいたアパルトマンからそんなに遠くないところにあった。そこで数カ月の間料理の勉強をしていたときの話だ。

イラスト浅沼秀二
季節はたしか春から初夏にかけて、爽やかで気持ちの良いころだった。ちなみに、ブラッセリーというのはレストランの種類みたいなもので、ニューヨークでイメージするのはそこそこ高級なフレンチレストランかもしれないが、本国でブラッセリーというと割と気軽なレストランで、そして何より「アルザス料理」を味わえるところとして親しまれている。アルザスという地域はアルプスを望むフランスの北東からスイス、ドイツ近隣を指し、現在はフランス国内に位置するが独自のアイデンティティを持っている。そうそう、ジブリ映画「ハウルの動く城」の舞台が実はこのアルザス地方のコルマールという街。冒頭シーンで帽子屋のソフィと魔法使いのハウルが駆け上がった空から見下ろす石畳の街並は、実際に訪れてみても中世のおとぎ話のような美しさという。
また、アルザスはドイツに近いこともあり、シャルキュトリーがおいしいところでもある。シャルキュトリーというのは肉の加工品のソーセージやハム、パテなどのことで、そのほかにもキャベツを発酵したシュークルート(ザワークラウト)、フォアグラ、クグロフなども名物料理。
アルザスと言えばワインの産地でもあり、リースリングなど細長いボトルの軽快で爽やかな白ワインが知られている。いつの日か、ライン川の流れに沿って遥か170キロメートルに及ぶワイナリー群のなだらかな丘陵を覆う豊穣な葡萄畑と、百花に彩られる村々の古き佇まいを訪れてみたい。オーベルジュに宿泊しながらアルザスワイン街道を巡りゆけば、それはきっと素敵な旅となるだろう。
つづく
浅沼(Jay)秀二
シェフ、ホリスティック・ヘルス・コーチ。蕎麦、フレンチ、懐石、インド料理などの経験を活かし、「食と健康の未来」を追求しながら、「食と人との繋がり」を探し求める。オーガニック納豆、麹食品など健康食品も取り扱っている。セミナー、講演の依頼も受け付け中。
ブログ:www.ameblo.jp/nattoya
メール:nattoya@gmail.com
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