食物アレルギー

梨花女子大学医学部卒業。ニュージャージー医科歯科大学でアレルギー免疫学フェローシップ修了。にきび治療、にきび、にきび痕の除去、アトピー性皮膚炎や食物・動物アレルギーの治療、化粧品や化学物質によるかぶれや腫れなどの治療が専門。
Holy Name Medical Center
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最近よく耳にする食物アレルギー。レストランでも「穀物が食べられないのでグルテンフリーにして」という人が増えたような気がする。子どもの誕生会などでも「うちの子はピーナッツアレルギーなので、ナッツ系のお菓子は出さないで」といった注文も多いという。仕事仲間のHさん(30代女性)は、日本で暮らしていたころ突然、白飯を食べると眠くなったり発疹が出たりするようになった。病院を転々とした結果、「食物アレルギー」だと判明。来米後は、米も小麦も砂糖も排除した生活に変え、ようやく健康を取り戻した。食物アレルギーは「新しい現代病」なのだろうか?
食物アレルギーは2種類ある
「食物アレルギーには、①IgE(免疫グロブリンE。シリーズ第1回を参照)が介在する過剰反応と②特定食物に対する不耐性の2種類があることを覚えておいてください」と話すのは、アレルギー専門医のユン・シーン先生。
①のタイプが免疫システムの「暴走」によるいわば真性の食物アレルギー。ピーナッツアレルギー、甲殻類アレルギーなどはこのタイプだ。「体内の諸器官に影響を及ぼすため、症状としては、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ、じんましん、皮膚の腫れ、腹痛、下痢などがあり、重症の場合は死に至ることもあります」。
免疫グロブリンE系の食物アレルギーを侮ってはいけないのだ。かたや、②の食物不耐性は、比較的症状が軽いという。「どちらのタイプかを見極めて治療するのが肝要です」。
①を誘発するアレルゲンは子どもの場合、牛乳、卵、大豆、小麦、ピーナッツ、木ノ実(ナッツ)など。大人の場合は、ピーナッツ、木ノ実、魚介類、甲殻類など。一方、食物不耐性②の原因には、サルモネラ菌などによる食中毒、コーヒーの飲み過ぎによるカフェイン過剰摂取、非アレルギー性のグルテン拒絶などがあるという。
“食物アレルギーには、免疫グロブリンEが介在する過剰反応と、特定食物に対する不耐性の2種類があります。免疫グロブリンEの過剰反応で起こる場合は、体の諸器官に影響を及ぼし、重症の場合は死に至ることもあります”
要注意は好酸球食道炎EOE
①タイプの食物アレルギーの中で要注意なのは好酸球性食道炎(EOE)だ。
「5000人に約1人の確率で発症する病気で、喉のつかえ感や胸部の痛み、飲み込みにくいなど逆流性食道炎によく似た症状があります。EOEの患者さんの半数が季節性アレルギーやぜんそくの症状を持っています」と先生は指摘する。
原因は、免疫システムの暴走から白血球の一種である好酸球が過剰反応を起こすためで、乳児が発症すると食事が飲み込めず栄養障害を起こす。成長期の子どもの場合は、逆流、嘔吐、腹痛を伴う。EOEの疑いがあったら内視鏡による食道の生体検査を受けるべし。残念ながら現時点でEOEの特効薬はない。診断が下ったらただちに、アレルゲンとなる食物を排除するしか方法はないのだ。
“軽い症状の場合は、市販薬で和らげることができます。しかし、症状がさらに進行して、喉が腫れ、嘔吐、腹痛、全身の発疹、呼吸困難などが出現したらただちに救急車を呼んでください”

増加する花粉症持ちの食物アレルギー
近年は花粉症を持つ人に食物アレルギーが増えているそうだ。花粉アレルゲンを排除しようとする免疫システムが、同種のアレルゲンが食物として体内に入ったときにも過剰反応してしまうらしい。シーン先生は言う。「カバノキの花粉症患者は、リンゴ、アーモンド、ニンジン、セロリ、ヘーゼルナッツなどを摂取するとアレルギー反応を起こす傾向があります」。花粉と食物のアレルギー連動関係をまとめたので下の表を参照してほしい。
食物アレルギーを発症したらどうしたらいいのか?「口内のかゆみや唇が腫れるなど軽い症状の場合は、『Benadryl』などの市販薬で和らげることができます。しかし、症状がさらに進行して、喉が腫れ、嘔吐、腹痛、全身の発疹、呼吸困難などの症状が出現したらただちに救急車を呼んでください」。
幸いなことに米国は、食物の成分表示が細かく、アレルゲンフリーの食べ物が容易に選別できる環境にある。食物アレルギーと診断されたら、徹底的に「アレルゲン食物」を退けて、自己防衛に努めよう。
次回は、アトピー性皮膚炎について聞く。
(次週に続く)

市販の抗ヒスタミン薬ベネドレル。
左は、子ども用のシロップ。右は大人用
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