トランプがアメリカ大統領に復帰してから、世界は大きく揺れている。まさかまさかのうちに、世界は以前とは大きく違ってしまった。それにしても思うのは、トランプが持っている世界観、歴史観と、私たちが持っている世界観、歴史観がまったく違うことだ。
1人のとんでもない指導者の誤った世界観、歴史観というより、“妄想”とか“自己顕示欲”とか言ったほうがいいものに、世界中がいま振り回されている。
はたして、こんなことがいつまで続くのか? というより、このまま世界はいままでとはまったく違ってしまうのか? 地政学的に言えば、これまでのアメリカの1極覇権世界が終焉を迎え、世界が多極化してしまうのか? そうして、中国が次の覇権を握るのか? それが、現在の最大の問題である。
トランプ出現は歴史的に珍しいことではない
ともかく、1人のとんでもない男によって、世界が大きく変わろうとしている。いや、すでに変わってしまったと言っていい。ローマ法王に扮した写真をホワイトハウスの公式画像に載せるのだから、もはや言葉もない。
こうなると、トランプがどれほどひどいかを論評しても仕方ないので止めておくが、問題はこれがいつまで続くかである。続けば続くほど、世界はとんでもない方向に進んでいき、元に戻れなくなる。
つまり、アメリカの1極覇権世界が終焉を迎え、世界は多極化する。そうして、中国がアメリカに代わって覇権を握る。いずれにせよ、自由、人権、民主主義は失われ、これまでとは違った世界になってしまう。
しかし、ここで歴史を振り返ってみると、こういったことは何度も起こっている。歴史というのは、1人のとんでもないリーダーの出現で、これまで大転換を遂げてきたからである。例えばナポレオン、ヒトラー、スターリン、毛沢東など、みなとんでもない人間であった。よって、トランプの出現は少しも珍しいことではなく、その出現は歴史的必然なのかもしれない。
覇権国が覇権挑戦を受けた歴史を振り返る
いま、トランプがやっていることは、完全な“妄想”に基づくデタラメだが、覇権国のリーダーとしては、本能的に間違っていない。なぜなら、覇権国は、次に覇権をねらう覇権挑戦国を本能的に封じ込めようとするからだ。
「MAGA」(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)はその現れであり、覇権の危機を感じなければ、こんな言葉は出てこない。
歴史を見ると、覇権国は常に覇権挑戦国を報じ込めようとしてきた。
紀元前では、古代ローマがカルタゴの挑戦をポエニ戦争によって退け、最終的にカルタゴは滅ぼされた。近世では、スペインがオランダとともに英国包囲網を敷いたが、これに失敗し、英国が次の覇権国となった。
英国が7つの海を支配する覇権国となってからは、ナポレオン帝国、ロシア帝国、ドイツ・オーストリア帝国、ドイツ帝国(ヒトラー・ナチス)と4度の挑戦を受け、いずれも退けた。
しかし、ヒトラー・ナチスには独力で勝てず、アメリカの助けを借りるかたちとなって、完全に覇権は交代した。
こうして20世紀はアメリカの1極覇権となったが、それに挑戦し続けたソ連との冷戦は続いた。しかし、1991年、ついにソ連を崩壊させた。それと前後して日本の経済挑戦も受けたが、これもアメリカは退けた。
そして、次に現れたのが中国である。中国は21世紀を迎えるまでは脅威ではなかったが、現在は過去のどんな挑戦国よりも強力で、手強い相手である。
しかし、トランプはそうは思ってはいないようだ。
この続きは5月23日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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