金融バブルが崩壊する、株価は大暴落すると言うと、またオオカミ少年かと思われ相手にされない。しかし、それでも性懲りもなく言っていれば、いずれそのときはやって来る。
これまでのトランプ政権の動きを見ていると、そのときは目前のような気がする。すでに、金(ゴールド)をのぞいて、株価をはじめとする金融資産の相場は方向感を失っている。
そんななか、アメリカは関税交渉で中国に屈服した。「トランプ砲は空砲だ」ということがはっきりした。そして、迫り来るのが「債務の上限」だ。これをクリアしないと、アメリカはデフォルトしてしまう。
いまや中国なしでは成り立たない日常生活
トランプの関税政策の錯乱ぶりを見ていると、とうとうアメリカ1極覇権世界、ドルによる世界支配が終わるのかと思えてくる。
すでに何度か論じてきたが、トランプは中国を甘く見過ぎていた。だから、関税145%をふっかけた。しかし、その反動で国内経済がズタズタになるとわかると、「80%が正しい」などと口走り、ベッセント財務長官に丸投げ。「猶予期間90日で30%」というかたちで最初の対中交渉を終えた。
これは明らかに、中国に屈服したということだ。
中国の製造業は、世界の製造業の約30%を占めており、それなしではアメリカ国民の日常生活は成り立たない。しかも、かつてアメリカの覇権を脅かした経済大国ニッポンとは違い、すでに軍事力でもアメリカを上回ろうとしている。
アメリカは同盟国の協力なしでは、中国を封じ込められない。それを、トランプの“化石アタマ”は理解できなかった。
中国が持つ“伝家の宝刀”は米国債の売却
アメリカにとって最大の中国リスクは、中国が米国債を
大量に持っていることだ。公式には、日本に次いで世界2位で、直接保有残高は7840億ドル(今年2月現在)だが、1兆ドルを超えているという見方が強い。
これを売られたら、アメリカはひとたまりもない。ドルは暴落し、アメリカ経済は大混乱に陥る。ただ、中国は米国債売却という“伝家の宝刀”を抜くのは容易でないと見られている。いったい、誰が買うのかという、大きな問題がある。
とはいえ、トランプ関税が発表された4月以降、世界屈指のリスクフリー資産とされる米国債は、買われるのではなく、売られている。
米国債売却でなにが起こるのか?日本は?
もし、米国債の投げ売りが起これば、国債価格は下がり米国金利は上昇する。そして、間違いなくNYダウは暴落。ドルも大幅安となる。アメリカの国内経済はリセッションに陥り、アメリカの世界覇権は大幅に後退する。
ここで、問題になるのは米国債を中国以上に保有する日本はどうしたらいいのかということだ。これまで日本は、米国債売却を交渉カードにしたことはない。したくてもできない。
ロシアは、ウクライナ侵攻前に米国債を売却した。中国もかつては日本以上に米国債を保有していたが、いまは相場を暴落させない程度に保有を減らし続けている。
このような世界の動きのなか、アメリカ自身が窮地に陥るのが、これまで以上に国債発行を増やし続けなければ、財政が持たなくなっていることだ。
この続きは5月30日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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