現金はゴミと同じ。ドル紙幣に価値はない
ヘッジファンドの雄者レイ・ダリオダリオは、かねてから「現金はゴミ」(cash is trash)」と発言している。基軸通貨ドルに対しても同じ見解だ。
その最大の理由は、現金の価値の基本である購買力(商品やサービスを購入することのできる能力)が失われるリスクあるからだ。
ダリオの現金に対する考え方は、以下のとおり(著書『変化する世界秩序に対処する原則——国々はなぜ興亡するか』のなかでの解説)だ。
裏付けなしの不換紙幣はでいくらでも発行可能
これまでの貨幣制度の変遷を振り返ると、3つの種類があった。第1は金貨や銀貨などの硬貨、第2は硬貨を裏付けとする兌換紙幣、第3はとく裏付けのない不換紙幣である。
硬貨から兌換紙幣に代わったのは、硬貨には大量に持ち歩けないという難点があったから。そのため硬貨を安全な場所に置き、それを裏付けとして紙幣を発行するようになった。これが兌換紙幣であり、その発行主は銀行だ。
その後、兌換紙幣は硬貨の裏付けを不要とした不換紙幣に代わった。現在のドルは、1972年のニクソン・ショックまでは金の裏付けがあったが、その後は、いくらでも発行できる不換紙幣になった。
したがって、FRBに限らず各国の中央銀行は、通貨(現金および貸し出し)を好きなだけ生み出せる。国の財政赤字は拡大する一方になる。その結果として、通貨の価値は低下する。ダリオが言うように、結局、「紙幣は最後にはただの紙切れ」になるのだ。
それでもドルを使い続けてきたのはなぜか?
それでも、世界中がドルを使っている。貿易決済の6割以上がドルである。トランプが大嫌いな貿易赤字を生み出した対米貿易黒字国は、アメリカから稼いだドルを手元に置いていても運用できない。そこで、米国債を購入して運用する。つまり、“対米投資”貯金である。
一方アメリカは、戻って来たドルとさらに刷り続けるドルによって消費を拡大し、世界中から輸入を増やす。これが「ドル循環経済」であり、日本も欧州も、そして中国も、このドル循環によって経済成長するという「ウィン・ウィン」の関係にある。したがって、ドル依存は麻薬のようなもので、すぐに止められるものではない。
ところが、このドル循環を関税によって断ち切ってしまおうとしているのだから、トランプの“おバカ”ぶりには呆れるしかない。アメリカは貿易赤字でいいのだ。それが、世界覇権の源泉であり宿命である。これをどのように続けていくかが、アメリカ大統領の最大の役目だ。
この続きは6月5日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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