2025年6月17日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」 このままでは手遅れになる「愛子天皇」。「男系男子」にこだわると皇統は続かない! (上)

 前回、読売新聞が提起した「女性・女系天皇容認」の記事を受けて、「愛子さまを天皇に!」と提言した記事は、大きな反響を呼んだ。「Yahoo!ニュース」に寄稿した同内容の記事には、数多くのコメントが寄せられた。
 そこで、今回はその続きとして、なぜ「愛子天皇」は望まれるのか? どうしたら女性天皇への道が開けるのか? を検討してみたい。それには「皇室典範」の改正が必要だが、これを急がないと、手遅れになる可能性がある。
*この記事は、「Yahoo!ニュース」にも寄稿します。

2021年12月5日、正装で青年行事に臨まれた愛子さま(代表撮影・ロイター)


国会審議は皇位継承問題の本筋を逸脱

 不思議というか、逃げているというか、敬宮愛子内親王を次期天皇にするという議論は、今国会でまったくなされていない。議論されているのは、皇族数の減少への対応策として、(1)女性皇族を結婚後も皇室に残す(2)旧皇族の男系男子を養子に迎える、の2点だけである。
 (1)に関しては、ほぼ全政党間で合意ができているが、その場合、配偶者と子どもも皇族とすべきかどうかについて、与野党で考え方に隔たりがある。自民党は皇族としないとし、立憲民主は皇族とすることも検討すべきとしている。
 自民が皇族としないとしているのは、それが「女系天皇」につながりかねないからだ。共産党は「女性天皇も女系天皇も認められるべき」という立場である。
(2)に関しても、いちおうの合意ができているが、養子となった男性の皇位継承資格に関して見解がまとまっていない。その後に生まれた男子が継承資格を持つことを適切としても、養子男性自身は資格なしというのが自民、公明で、立憲民主は結論を保留。まずは、養子の対象となる男性がいるのかどうか、そして、その候補者の意思も確認すべきだと主張している。日本維新の会も同様である。

合意できるところだけを取りまとめて先送り

 このように、国会の皇位継承のあり方をめぐる審議は、ただ単に皇族数を増やす。そのためにどうするかという議論に終始し、意見も別れている。そのため、「合意できるところだけをまとめるしかない」という話が伝えられている。
 というのは、参議院選挙前、つまり今月中(6月いっぱい)に、衆参両院の正副議長が立法府としての取りまとめ案を提示するとしてきたからだ。
 となると、「女性皇族は結婚後も皇族として残ることができる」「旧皇族の男系男子を養子に迎えることができる」ということだけが、決まることになる。そして、その具体的な処遇については先送りされてしまう。
 しかし、これは皇位継承問題の本筋ではなく、小手先だけの改正にすぎない。それでも、この案が取りまとめられると、どうなるだろうか?
 女性天皇、女系天皇への道はほぼ閉ざされてしまうのは間違いない。具体的に言うと、国民の8割が望む愛子天皇は誕生せず、愛子さまは結婚後に皇籍降下せずに皇族として残ることだけが認められることになる。

保守派の主張は“男尊女卑の国”を守ることに!

 前回記事で、私は保守派が「男系男子による万世一系」にこだわるのはおかしい。男にしか継承されないY染色体を根拠にしても、それを科学的に証明できない。つまり、保守派はフィクションに過ぎない万世一系をフィクションとしてそのまま受け入れ、日本独特の皇室の伝統を守れと主張していると指摘した。
 よって、女性天皇はもとより女系天皇も場合によっては認めるべきとし、愛子天皇を実現させることこそ、日本の伝統を守り、皇統をつなぐ最前の道ではないかと訴えた。
 それに、そうすれば、女性の地位が著しく低い“男尊女卑の国”とされる日本のイメージは一新され、新しい時代が来ることで経済低迷からも脱せられる可能性があるとも述べた。
(つづく)


この続きは6月26日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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