ニューヨークにある、もう一つの顔
「スープキッチン」と聞いて、どんな場所を思い浮かべるでしょうか。支援を必要とする人たちへの食事提供の場といった印象が強いかもしれません。しかし実際に足を運んでみると、そこにはもっと多くの「気づき」と「つながり」がありました。
2024年から、私たちNY de Volunteerは、マンハッタンにあるセント・ジョーズ・スープ・キッチン(St. Joe’s Soup Kitchen)での配膳ボランティアに定期的に参加しています。この活動を通して見えてきたのは、単なる支援ではない、人と人とが交わる温かなコミュニティーの姿でした。
セント・ジョーズ・スープ・キッチンとは?
ファーストプレスビテリアン教会内で毎週土曜に行われている食事支援活動です。40年以上の歴史があり、ホームレスや生活困窮者に無料で温かい食事を提供しています。


誰でも利用でき、利用者は高齢者、失業者、移民や社会的孤立を抱える人などさまざま。運営は全てボランティアの力によって成り立っています。
配膳だけじゃない、役割はいろいろ
ボランティアは、午前の調理チームと午後の配膳チームに分かれています。私たちは主に午後のミールサーブ(配膳)を担当。当日の流れは、準備→配膳→片づけと多岐にわたり、料理の盛り付けや飲み物の配布、スナック補充・提供、トレーの回収、ごみの分別やトレー洗い
など、当日のボランティアの人数によって自然に役割が分担されていきます。
また、それぞれの持ち場にはせんと・ジョーズ・スープ・キッチンのボランティアリーダーが配置されており、何か困ったことがあればすぐに相談できる体制になっています。


ゲストとの交流から生まれる、気づき
活動を通して感じたのは、ここがただ食事を「提供する」場ではなく、人と人が対話し、「つながる」場であること。ゲストから「日本語話せるよ!」と声をかけられたり、日本への旅行体験をシェアしてもらったり、また別の日には、NBAや選挙の話題で盛り上がることもありました。
初参加のボランティアからは、「普段、初対面の人と深くかかわる機会がないので、新鮮だった」「調理担当だった以前のスープキッチンと比べて、直接ゲストと話せる配膳はまた違った体験だった」といった声も聞かれました。
「文化」や「価値観」の違いに触れる時間
中には、好みの料理を尋ねられたり、「今日はバーガーじゃないの?」などとリクエストを受けたりすることも。率直に思いを伝える姿からは、アメリカ社会ならではの自己主張と多様性が垣間見えました。

一方で、「できないことはできない」とお互いに率直に伝え合い、それを尊重しあう関係性もそこにはあります。スタッフもボランティアもゲストも、上下ではない対等な関係性の中で、自然体でかかわっている姿が印象的でした。
食べることから見える課題
トレーを片付けていると、食べ残しが気になることもあります。たとえば豆の副菜が手つかずで残されていたり、硬いパンが食べられずに大量に残されていたり。
噛む力が弱っている人にとっては、食べるという行為自体が負担になることもあります。そうした「食の選択肢」や「身体的ニーズの多様さ」への配慮が求められることを、実感しました。
スープキッチンがつくる、もう一つの居場所
ホールには、自然と顔なじみのゲスト同士が集まり、笑い合い、語り合う姿が多く見られます。そこには単なる支援ではなく、コミュニティーとしての温かさがありました。
ゲストから「God bless you」と言われたり、「ありがとう」と声をかけてもらうたび、支えているつもりの私たちのほうが元気をもらっている―そんな感覚になる瞬間が何度もありました。

ボランティアだからこそ見えた世界
NY de Volunteerからのボランティアは、主婦の方、社会人、学生まで幅広くアメリカ生活の長さや英語力もさまざまです。
「家族に子どもを預けて参加した」「仕事以外で人とかかわってみたい」といった背景の違いはあっても、「やってみたい」という想いは共通でした。

ボランティアからは「受益者と直接お話しをすることで印象が大きく変わった」「アメリカの社会を違う角度から知ることができた」などの声が聞かれました。
「私にもできるかも」の一歩を
スープキッチンでのボランティアは、ただの奉仕活動ではありません。そこには、文化の違いを越え、人と人が支え合う「居場所づくり」の側面が確かにありました。
特別なスキルがなくても、英語が得意でなくても大丈夫。ちょっとした勇気と時間、そして誰かを思う気持ちがあれば、誰でも参加できます。見えない境界線を越えて、心をつなぐこの場所に、ぜひ一度、足を運んでみませんか?


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