かつて、世界中の若者たちはアメリカの大学に留学することを目指した。アメリカ留学は夢であり、また、将来の成功への道だった。
「かつて」と書くのは、それをトランプが閉ざしてしまったからだ。これほど愚かな政策はない。トランプは、ハーバードをはじめ名門大学を次々に弾圧し、学生ビザの発給を制限し、不法移民ばかりか、留学生まで締め出そうとしている。
これが招く結果は明らかだ。優秀な人材、研究者、頭脳を失ったアメリカは、衰退の一途をたどる。

■学生ビザの発給が昨年に比べて半減している
日本人のアメリカ留学生数は、ここのところ大幅に減っているが、トランプ政権になってからは、さらに大きな落ち込みを見せている。
アメリカ国務省のデータを見ると、学生ビザ(F1)の発給数は昨年より半減している。これまでだと。毎月の発給数は1000件弱。それがいまは500件程度で、この5月は520件である。
ということは、留学したくても留学できない学生、留学を断念した学生、あるいは留学先をアメリカ以外にした学生が、昨年比で半数以上いるということだ。
アメリカは9月入学。少なくとも8月初旬までにF1ビザをもらえないと、留学はできない。このビザの発給が、トランプ政権になってからは、制限されているのである。
■ビザ発給に必要な面接がいつになるかわからない
FIビザに限らず、アメリカに滞在できるビザの発給には、インタビュー(面接)が必要。これが、トランプ政権になってからしばらく凍結され、再開されたのが6月18日。それも、制限付きとなった。米国大使館のウエブには、こうある。
《F、M、またはJ非移民ビザを申請するすべての方は、米国の法律に基づく身元確認および入国適格性の審査を円滑に行うため、ご自身のすべてのソーシャルメディアアカウントのプライバシー設定を「公開」に変更するようお願いします。》
《学生ビザまたは交流訪問者ビザ申請に関する追加または新規の面接予約は、当面の間、非常に限られます。面接のスケジュールは状況に応じて変動します。》
《既に面接予約をお持ちでない学生ビザまたは交流訪問者ビザの申請者については、今夏中に面接を予約できることを保証することはできません。》
■安全保障上の思想チェックのうえに留学生嫌い
なんでこうなったかというと、第一に、反米的な思想を持つ人間を入国させないためである。ソーシャルメディアのアカウントの公開は、まさにそれ。思想チェックである。
これは、「外国人の入国を制限し、外国のテロリストおよびその他の国家安全保障・治安の脅威から米国を守るための大統領令」に基づいている。
次に、トランプは留学生が嫌いだということ。留学生は、非白人が多く、国別では1位インド、2位中国、3位韓国、4位カナダ、5位サウジアラビアとなっている。
学生ビザを申請するには、I-20フォーム(書類)が必要になる。I-20は、学校側が留学資金を確認して、入学を許可したことを証明する正式な書類だが、これが送られてくるのも遅れている。
そのため、昨年暮れにせっかく合格通知をもらい、I-20も持っているのに、インタビュー待ちで9月入学に間に合わないかもしれないという学生がいる。先日、それが2 、3人ではないことを米国大使館の知人から聞いた。
この続きは9月18日(木)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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