■温暖化対策は将来にわたる巨大ビジネス
CO2排出量の国別ランキングは、1位の中国が断トツ(約32%)で多く、2位アメリカ(約14%)、3位インド(約7%)と続き、4位がロシア(約5%)、5位が日本(約3%)である。ただし、このトップ5で、あと数年以内に排出量がピークアウトする可能性がある国は中国だけである。
再生可能エネルギーへの転換は、太陽光発電や風力発電などによって行われるが、再生可能エネルギーを大幅に増やしているのも中国だけである。「IEA」(International Energy Agency:国際エネルギー機関)によると、中国の太陽光発電は急速に拡大しており、2030年代にはアメリカ総消費電力量よりも多くの電力を産み出せるという。
中国の国家統計局が発表した火力、水力、風力などの各種発電量から概算すると、2023年末時点の非化石燃料による発電の割合は約33.7%。「Global Energy Monitor」(グローバル・エネルギー・モニター)によると、すでに化石燃料発電の割合を上回っているという。
中国がここまで温暖化対策に邁進するのは、酷暑、干ばつ、水害など気候変動から国民を救うためではあるが、それが将来にわたる巨大なビジネスでもあるからだ。温暖化対策は今後、経済的な利益を生み出す。
これを、なぜかトランプがわかっていないことは、じつに不思議だ。
■こと温暖化対策に関してはEUと中国は協力
アメリカが明らかに中国排除に乗り出してから、欧州もそれに同調して、中国との関係を見直すようになった。しかし、温暖化対策においては、そういうわけにはいかない。
7月24日、EUのコスタ大統領とフォンデアライエン委員長は北京を訪問し、習近平主席や李強首相と相次いで会談した。その目的は、レアアースの輸出規制の撤廃とウクライナ戦争に関する中国の立場の確認だったが、会談後に、気候変動対策に関する共同声明を発表した。
もし温暖化が人類の生存を脅かすレベルに達するなら、アメリカもこの分野に関しては中国と協力関係を築かなければならない。太陽光パネルの排除、半導体輸出規制などやっている場合ではない。
おそらく、次の世界覇権を決めるのは、「カーボンニュートラル」と「シンギュラリティ」(AGI)であろう。この2つの分野でリードした国が、世界を支配し、人類を危機から救うことになる。トランプのような化石人間を大統領にしたため、アメリカがその国になる可能性は大きく後退してしまった。
■大国が真剣にならない限り温暖化は止まらない
思うに、世界が温暖化対策で一致協力するなどということが、今後ありえるだろうか? 最近のCOPの場では、国家間の対立が目立ち、口先だけの対策しかまとまらない。
温暖化、気候変動などの取り組みが評価される、国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)が出す「Sustainable Development Report」(サステナブル・ディベロップメント・レポート、持続可能な開発報告書)の2024年版によると、ランキング1位はフィンランド、2位はスウェーデン、3位はデンマーク、4位はドイツ、5位はフランスとなっていている(167カ国のランキング)。
日本は18位で、アメリカは46位、中国は68位である。
ただし、このランキングで上位にくることは、全体にとっては、それほど意味はない。アメリカ、中国などの大国が、真剣に対策に乗り出さない限り、地球温暖化は止まらないからだ。
はたして、人類は温暖化(いまや沸騰化)の危機を乗り越えられるのか? 今年のCOP30は、11月にブラジルのベレンで開催される。そこにアメリカの姿はない。そして、またしても、なにもまとまらないで終わるのだろうか?
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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