先日のスイス中央銀行発表により、市場に激震が走りました。その後、欧州中央銀行(ECB)の追加金融緩和政策ニュースなど、ここのところ為替市場からは目が離せません。
さて、今回のコラムでは一旦マーケットから話題をそらし、ジョン・メイナード・ケインズについて書きたいと思います。ケインズというと、昨今の日本や先日発表された欧州の追加金融緩和政策にも大きく影響を与えた近代経済学ケインズ学派の権威的学者として著名ですが、その一方で世間一般のイメージとは裏腹に極めてリスクを好む投資家あるいは投機家として生涯を通して活動してきました。
面白いのは、イギリスの官僚として当時のインド省や大蔵省で働き、また政治家としても活躍しているが、その実績や学説の堅実さとは逆に投資においては大きくリスクを取る投資方法を好んだことでしょう。ケインズの投資は様々で、株式や外国為替、そして農産物先物などにも投資しています。
ケインズは確認できる限り、20世紀初頭から個人投資をしていますが、特に1919年以降、本格的に投機活動を開始し、当時ようやく自由化された外国為替に大きく張りました。ケインズの相場観はまさに2015年現在の外国為替市場と同じく、米ドルに強気であり、英ポンドやドイツマルクなど欧州通貨に弱気でした。その投機方法はこれまた日本でも今人気のFX取引と同様に少ない証拠金を元に大きく張る、ハイレバレッジ投資でした。そして、現代のデイトレーダーがごとく連日取引を行っていたのです。これにより、たった1年で資産を2倍以上にまで増やし、その後も取引は好調だったのですが、1920年に為替市場が急激に動き、結果として破綻してしまいます。
破綻後も、ケインズは懲りずに何度も資産を減らしたりしながらも、1905年から45年までの40年間で資産を1869倍にまで増やし、年平均で21%ものリターンを叩き出しています。また、ケンブリッジ大学キングス・カレッジの基金も運用し、3万ポンドの資産を38万ポンドにまで増やしてます。これはその期間のイギリスの株式指数を8%も上回っているのですから、驚きです。
このようにケインズは学者としては例外的に高リスク投資を好んで行い、途中で資産を減らしながらも諦めずに続け、最終的に極めて優れた投資リターンを出しているのは特筆に値するでしょう。(在NYエコノミスト チングーン・ボロルマー : l.cbolormaa@gmail.com)
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