2025年11月6日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」 誰が首相になろうと円安は進み国民生活は崩壊する。いまこそ国債発行に歯止めを!(下)

■金利0.5%物価上昇率3.0%では現金は目減りする

 こうして積み上げた国債残高はあまりに巨額(2024年12月末時点で約1173.5兆円、GDP比約237%)で、金利を上げたら利払い費がかさみ、財政が逼迫し、最終的には予算が組めなくなって、政府が立ちいかなくなる。
 したがって、日銀は現在の政策金利(無担保コール翌日物の誘導目標)を0.5%に留めている。その結果、今日まで、円の価値は毀損され、円安が進んできた。
 金利が0.5%で物価上昇率が約3.0%という状況では、どんな対策を打とうとほとんど効果はない。いくら現金を給付しようと、減税しようと、物価上昇を上回る賃金上昇がないうえ、金利がほぼつかないのだから、現金はどんどん目減りする。

■国債発行は限界で、格付け「B」転落もあり得る

 物価対策の財源論で、国民民主、れいわ、参政などが、「足りない財源は国債発行でまかなう」と言っているのは、正気の沙汰ではない。高市自民新総裁も赤字国債の発行を容認し、総裁選挙中に「金利を上げるのはアホや」と言ったが、これで「高市トレード」が進んだのだから、現状認識が甘すぎる。
 日銀が金利を上げられない状況を見れば、国債発行はもう限界なのは明らかである。それなのに、さらに国債発行に頼る経済政策を続ければ、日本国債の格付けは引き下げられる。
 現在、日本国債はかろうじて「A」格(S&P「A+」、ムーディーズ「A1」、JCR「AAA」)を維持している。しかし、このままでは、「B」格転落もあり得るだろう。
 そして、市場は、それを見越して動き出す。いや、もう動き出している。国債の売りだ。

■国債利回りはすでにじわじわと上昇を続けている

 今年の4月、30年ものの長期国債、40年ものの超長期債に猛烈な売り圧力がかかり、価格がみるみる下落(利回り上昇)するということが起こった。国債の信認が薄れ、買い手がいなくなった。これに慌てた財務省は、最終的に長期国債の発行を減額することになった。
 その後も国債売りは止まらない。長期金利の指標とされる10年ものの利回りもじわじわと上がった。
 そして、10月10日、公明党の連立離脱でサナエショックが起こると、新発10年物国債の利回りが一時、前日終値比0.010%高い1.700%まで上昇した。これは、約17年ぶりという高水準である。

この続きは11月7日(金)に掲載します。 
本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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