もうあまりのデタラメぶり、オレ様ぶりに、あきれるしかなくなったトランプの“独裁政治”。それを見せられているだけで、イヤになってくるが、アメリカ大統領であるだけに、どうしようもない。
今回は、先の日本訪問を含めたアジア歴訪から、今日までのことを時系列でまとめてみる。このままでは、アメリカは本当にダメになってしまうかもしれない。そうしたら、日本も道連れになってしまう。
「ノーベル賞に推薦する」と言われてご満悦
先月のトランプの「アジア外遊」の目玉は、日本訪問ではない。それなのに、日本のメディアは高市首相がトランプに気に入られたことに感激し、すっかりトランプ批判をしなくなってしまった。
10月26日、トランプはまず、マレーシアに行った。クアラルンプールに到着すると、民族衣装をまとった人々の歓迎の舞いとアンワル首相の出迎えを受け、自らダンスを披露。ご機嫌で、ASEAN(東南アジア諸国連合)の首脳会談に出席した。
この席で用意されていたのが、タイとカンボジアの和平合意の調印式。トランプが合意文書に署名すると、和平を仲介したことに対しての厚い感謝の言葉を送られた。
これは事前にお膳立てされたご機嫌取りだが、トランプはすっかり舞い上がった。そうして翌日、日本入りし、天皇と会見。その翌日は高市首相と会談し、「ノーベル賞に推薦する」と言われて、完全にご満悦モードに入った。
この後、高市首相は「マリンワン」(大統領専用ヘリ)に同乗して横須賀ベースへ。空母ジョージ・ワシントン上で、「ウイナー」と紹介され、スマイル&ジャンプしたので、日本のイメージが一新したのは言うまでもない。
高市首相の「ノーベル賞発言」はただのご機嫌取りと信じたいが、日本がここまでしなければならないことを思うと、哀しいものがある。
日本、韓国訪問は合意マネーの「集金ツアー」
日本で2泊した後の10月29日、トランプが向かったのは韓国。慶州で開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議に出席するためだが、同日、李在明大統領と会談し、関税交渉の合意を取り付けた。
これにより、韓国は対米投資(献上金)3500億ドルのうち2000億ドルを10年間の年割りで払うことになった。
日本はすでに5500億ドルで合意し、トランプの任期中に払うことになっている。日本訪問では、それを高市首相に念押しし、具体的なプロセスにまで約束させた。
つまり、今回のトランプのアジア歴訪は、日韓に関しては、「集金ツアー」だったのである。
ただし、最大の目的は集金ではない。中国の習近平主席と会い、首脳会談をすることだった。ここで、中国側に譲歩させ、“オレ様”ぶりを見せつけることだった。
トランプは中国に対しては一貫して、その力を削ぎ、封じ込める戦略で臨んできた。その最大の武器が関税だが、中国はほとんどの国がしたように、まったく譲歩はせず、対抗措置を取ってきた。そちらがやるなら、こちらもやるという手法だ。だから、トランプは習近平に直接会って、成果をあげようとしたのである。
ありえない場所で余りにそっけない首脳会談
当初、事務方の交渉が進まず、米中首脳会談は流れるのではと思われた。しかし、中国側が折れて応じることになった。しかし、その場所は釜山国際空港の滑走路脇にあるありふれた軍施設。10月30日、そこの一室で、トランプと習近平は、白いクロスで覆われたテーブルを挟んで対峙した。
世界の2大国のトップが、こんな殺風景なところで会談するなど異例中の異例。これまでのアジア歴訪でのトップ会談とのあまりの違いに、誰もが驚いた。
トランプははっきり言って、習近平にあしらわれたと言っていい。これは、会談の結果を見れば明らかだ。
アメリカは中国からの輸入品に対する34%の相互関税のうち、24%分を1年間カットして10%に戻した。それに併せて、中国は米国産大豆などに適用していた最大15%の報復関税を停止した。そして、レアアース(希土類)の輸出規制を1年間停止するとしたのである。
「大成功」は単なる強がりで、トランプ“完敗”
首脳会談後、トランプはうまくいったという表情を見せ、「会談は大成功」「10点満点中12点だった」と述べた。トランプは、誰かと会談すればなんでもかんでも「うまくいった」と言う傾向がある。ともかく、自分の非は絶対認めないので、その言葉は信じられない。単なる強がりだ。
会談後、習近平はできるだけ速やかに事務的な手続きに入ることを米中双方に指示した。ところがトランプは、そそくさとエアフォースワンに乗り込み、釜山国際空港から帰国の途に着いたのである。
トランプが求めていたのは、レアアース輸出規制の完全撤回である。しかし、中国は1年間の時限措置にとどめた。これは、トランプの“完敗”と言っていい。中国はトランプの脅しには屈せず、長期戦の構えを見せたのだ。
すでに、中国はトランプを十分に研究している。それを考えると、米中の関税・貿易交渉は、一時休戦したに過ぎない。
この続きは12月17日(水)に掲載します。
本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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