「その名はモコチンチ」

南米のボリビアを旅したときの話。
アンデス山脈の標高4000メートルにある街ラパスはお椀のような地形をしている。底の部分が中心街で高層ビルも立ち並ぶ。そして驚くのは「お椀」の絶壁にまで家屋が建っていること。まるで鳥の巣みたいだ。
ボリビアはお隣のペルーほど知られていないが、インカの遺跡も多くありアンデスの秘境巡りは旅人の冒険心をくすぐる。また、ラパスはこの山脈と共に生きる民族の織物や伝統工芸品が数多く集まっており、アルパカやリャマの手織り製品を買い求める人々のメッカでもある。
ぼくはというと訪れた街々で「食巡り」をするのを楽しみにしている。世界中どんな土地にも心温まる料理との出逢いがあるからだ。なのでどの町でも毎朝目が覚めるとマーケットへすっ飛んで行って食材探検をする。ラパスのマーケットは以外と大きくて立派だ。富士山よりも高いのに食材は結構揃っている。
朝ごはんは食堂でレブレルト・デ・カルネを食べてみた。朝の定番らしい。これはぶっかけ飯みたいなもので、スクランブルエッグ、ひき肉、そしてフレンチフライまでがご飯に載っている。食欲をそそるシラントロの香りがたまらない。
マーケットの一角には色鮮やかなフレッシュジュースのブースがずらりと並んでおり、女性たちが声高らかに客引きをしている。威勢が良すぎて近づくと腕を引っ張られたりなんてこともある。オレンジ、パイナップル、マンゴー、パパイヤ…好きなものをその場でブレンドして作ってくれるジュースは美味しそうだ。
喉が渇いたのでどれにしようか迷っていると、梅干しのようなものが入った紅茶っぽい色の飲み物が目に入った。気になったので買ってみることに。グラスに入った冷たいジュースはスッキリとしてほんのり甘くなかなかの美味。なんという飲み物か訊ねてみると、三つ編みのインディヘナの女の子は大きな声で、
「モコチンチ!」
と答えてくれた。
「フレスコ・デ・モコチンチ」はドライピーチとシナモンを煮て冷やしたボリビアの国民的な飲み物。空が近く乾燥しているラパスで喉を潤すならこれ。シナモンで体も温まりそう。

浅沼(Jay)秀二
シェフ、ホリスティック・ヘルス・コーチ。蕎麦、フレンチ、懐石、インド料理などの経験を活かし、「食と健康の未来」を追求しながら、「食と人との繋がり」を探し求める。オーガニック納豆、麹食品など健康食品も取り扱っている。セミナー、講演の依頼も受け付け中。
ブログ:www.ameblo.jp/nattoya/
メール:nattoya@gmail.com
浅沼(Jay)秀二シェフ 世界の食との小さな出逢い 第1回「その名はモコチンチ」
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