33年以上続いたCBSの看板トーク番組「レイトショー・ウィズ・スティーブン・コルベア」が21日で終了する。16日付のニューヨークタイムズは映画監督で脚本家のビル・カーター氏によるオピニオン「CBS Cancels Itself, Not Just Colbert(CBSはコルベアだけでなくCBSそのものをキャンセルした)」を掲載、メディアの政治的独立性や表現の自由が後退する現状について論じている。

午後11時35分の時間帯で視聴率1位。今年5月最終週の平均視聴者数は305~330万人に達した(photo: The Late Show with Stephen ColbertのYouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/watch?v=wkARy_sz5z8からスクリーンショット=2026年5月18日)

コルベア降板はトランプ政権に“忖度”したとの見方が強い。カーター氏は、これは単なる番組打ち切りではなく、CBS自身の存在感の低下を示す出来事だと指摘する。

鋭い政治風刺で深夜枠番組のトップに

コルベアはコメディー・セントラルの「コルベア・レポー」で、保守系評論家を誇張した架空の人物を演じ、鋭い政治風刺で人気を得た。2014年、CBSがデイビッド・レターマンの後任として彼を起用した際、期待されたのは「真のコルベア」としての司会だった。しかし当初は、従来型の中立的な深夜番組に合わせようとして個性が薄れ苦戦した。転機となったのは16年。新プロデューサーのクリス・リヒト氏の参加と、トランプ氏の政治的台頭が重なり、番組はニュースを軸にした政治風刺へと舵を切った。これによりコルベアは深夜番組の視聴率競争で首位に立ち、その地位を長く保った。

「経営上の判断」に疑問

CBSは番組終了の声明で、年間少なくとも4000万ドルの赤字を理由に「深夜帯のテレビ業界が直面する厳しい状況を踏まえた純粋に経営上の判断。視聴率や内容、その他の事柄とは一切関係ない」と説明。カーター氏はしかし、この説明に疑問を呈する。番組が系列局に与える価値、CBS番組の宣伝効果、夜11時台のニュース視聴者を引きつける役割などが計算に入っていないからだ。また、コルベアによると、CBSは財務上の懸念を事前に示さず、コスト削減策も提案しなかったという。

パラマウント合併とトランプ氏への忖度

背景には、CBSの親会社パラマウントの合併問題と、トランプ氏との関係があると見られている。トランプ氏はコルベアの風刺をたびたび批判し、番組終了を求める発言もしていた。さらにパラマウントは、ニュース番組「60ミニッツ」を巡るトランプ氏の訴訟で1600万ドルを支払って和解。コルベアがこれを番組内で「賄賂」と批判した数日後に、打ち切りが伝えられた。

カーター氏は、CBSが33年続いた深夜番組枠を終わらせ、自社制作番組ではなくシンジケート番組に時間帯を渡すことは、放送局としての後退だと見る。最大の損失は、「権力者を自由に批判し、視聴者がそれを選んで見られるというアメリカ的価値の弱体化」だと断じている。