ニューヨーク市の難関公立高校で、黒人・ヒスパニック系生徒の合格者が極端に少ない状況が続いている。市教育局(DOE)が発表した2026年度の入試結果によると、市内公立校の生徒の約62%を占める両層が、最難関8校の新入生では約10%にとどまった。一方、合格枠の約80%はアジア系と白人の生徒が占めた。ニューヨークタイムズが7月14日、伝えた。

特にマンハッタンのスタイヴェサント高校では、777人の合格者のうち黒人生徒は3人、ヒスパニック系は21人だった。両者を合わせた人数は前年より約3分の1減少した。スタテン島工科高校でも黒人生徒の合格者は1人だけだった。これに対しアジア系※は全専門高校の合格者の57%を占め、スタイヴェサントでは69%、ヨーク大学付属クイーンズ科学高校では78%に達した。
これらの専門高校は、市内高校生の約5%しか通わない一方、名門大学や将来のキャリアにつながる進路として高い評価を受ける。入学は、数学と英語の114問を3時間で解く「専門高校入学試験」の成績だけで決まる。試験は多段階の問題解決力や時間配分を問うため、数カ月から数年の対策を受けた生徒が有利になりやすい。
※アジア系合格者の国・地域別内訳は公表されておらず、日本人および日系人生徒数は不明。
批判は人種差別的と、支持は公平と主張
批判派は、1日で行われる重要な試験を人種差別的だと指摘、生徒の知性や能力を正しく測るものではないと主張している。難関校であるブロンクス・サイエンス高校の卒業生であるマムダニ市長や、ビル・デブラシオ元市長はこの入学選考プロセスを「甚大な不正義」と呼び、エリック・アダムス前市長はこれを「ジム・クロウ式※の学校制度」と断じた。マムダニ氏は市長選に出馬する前、高校入試の廃止を求めていたが、昨年、その姿勢を和らげ、この問題を自分にとっての「葛藤」だと述べている。
一方、支持側は、人種や所得を問わない公平で厳格な試験であり、難度の高い授業に備える力を測るには必要だと主張している。
※ジム・クロウ法=1876〜1964年にかけてアメリカ南部を中心に存在した、人種差別を正当化・強制した州法の総称。奴隷解放後も黒人の権利を制限し、公共施設や交通機関での白人と黒人の隔離(分離)を法的に義務付けた。黒人たちの長年にわたる反対闘争や、1950年代〜60年代の公民権運動を経て、64年に成立した公民権法によって廃止された。
改革の行方は不透明
マムダニ市長は、単一試験だけで市内の生徒の適性を判断できないとの考えを示し、結果を精査するとした。ただし制度変更には州議会の対応が必要で、卒業生団体や保護者団体の反対も根強い。連邦政府が公立学校の多様性推進策(D.E.I.)への監視を強める中、改革の行方は不透明だ。今後は試験の存続だけでなく、中学校での情報提供、無償の受験準備、作文など複数評価の導入をどう進めるかが焦点となる。
全米の都市圏に共通する構造的問題
人種による教育格差はニューヨーク特有の問題ではなく、全米の大都市圏に共通する構造的な問題だ。ただし、「アジア系と白人が多い=単純に裕福な家庭が多い」と一括りにするのも実態を見誤ることになる。特にアジア系には低所得層、移民家庭、英語学習者も多く、ニューヨークの専門高校では低所得のアジア系家庭が試験対策に大きな時間を投じているケースもある。
米政府監査員(GAO)も、アメリカの学校の生徒は全体として多様化した一方、多くの学校が依然として人種・民族・経済階層ごとに分断されていると結論付けている。GAOの調査報告によると格差は、住宅・学区の人種別および所得別分離、中学校段階での上級授業や受験情報へのアクセス度、塾、家庭教師、課外活動などへの投資、選抜試験や内申評価の仕組み、学校側の推薦、ギフテッド認定、進路指導、世代間の資産、保護者の学歴、英語力などの要因が重なっているとしている。
















