日本映画が海外映画祭で存在感を高める中、世界の映画ファンからも注目を集める若手俳優の一人が南沙良だ。今年は「万事快調〈オール・グリーンズ〉」と「マジカル・シークレット・ツアー」の2作品を携えてニューヨークを訪れ、アジア最大級の映画祭「ニューヨーク・アジアン映画祭(New York Asian Film Festival、NYAFF)」では、将来の活躍が期待される俳優に贈られる「ライジング・スター・アジア賞(Rising Star Asia Award)」を受賞した。

近年は出演作が国内外の映画祭で相次いで上映されるなど、着実に活躍の場を広げている南。受賞の喜びや上映作品への思い、そして俳優としての現在地についてニューヨークで話を聞いた。
「またニューヨークへ行ける」
映画祭への参加が決まった時、南が真っ先に思い浮かべたのは、「またニューヨークへ行ける」という喜びだったという。約10日間の滞在中には、アメリカ自然史博物館を訪れたり、念願だった「カッツ・デリカテッセン」で名物のパストラミサンドイッチを味わったりと、街そのものも満喫した。
また、海外映画祭ならではの楽しみもある。南にとって、現地の観客と一緒に自身の出演作を鑑賞することは、普段なかなか得られない貴重な体験だ。「見ている方と一緒に映画を見ることって、なかなかないじゃないですか。皆さん、こういうところで笑ってくださるんだとか、それを知れたのがすごく面白かったです」
国や文化が違えば、観客が笑う場面や反応も変わる。そうした違いを肌で感じられることも、海外映画祭ならではの醍醐味だ。

近年は主演作が続き、「オールグリーンズ」と「マジカル・シークレット・ツアー」の2作品に加え、「禍禍女(まがまがおんな)」(ゆりやんレトリィバァ初監督作品)など出演作が海外映画祭で上映される機会も増えている。
「こんなにも海外に行けることは、想像していなかったです。でも、改めて言われると確かに多い。すごくうれしいことですね」

「私にとっての新しい挑戦」
今回上映された「万事快調〈オール・グリーンズ〉」と「マジカル・シークレット・ツアー」は、ジャンルや世界観こそ異なるものの、どちらも現状を変えようともがきながら、自分なりの答えを探して前へ進もうとする若者たちを描いた作品だ。
田舎町から抜け出すため、一獲千金を狙って“禁断の課外活動”に踏み出す女子高校生3人を描いた青春映画「万事快調〈オール・グリーンズ〉」は、南にとって久しぶりの映画撮影でもあった。

「新鮮というか、あまり見たことのないテーマでしたし、私自身、新しい挑戦になるかなと思ってやらせていただきました。スタッフさんとキャストのみんなが作品に対する愛をすごく持っていて、お芝居することや映画を作ることって、やっぱりすごく楽しいなって改めて思えた作品でした」
一方、「マジカル・シークレット・ツアー」では、有村架純や黒木華ら日本映画界を代表する俳優陣と共演。未婚で妊娠中のキャバクラ嬢・麻由を演じた。同作は、借金を抱えた主婦・和歌子(有村架純)、非正規雇用の研究員・清恵(黒木華)と出会い、シンガポールから金を運ぶ密輸に加わる。境遇の異なる3人がチームとなり、それぞれの自由を求めて進んでいく物語だ。
「有村さん、黒木さんたち大先輩とお芝居させていただけたことが本当にうれしくて。私にとっても新しい挑戦でした。少しでも爪痕というか、何か残せたらいいなと思って撮影に臨みました」

現場では、先輩たちの作品や役に向き合う姿勢から多くを学んだという。「お二人とも本当に温かい方なんですけど、作品や役に対する思いというか、熱量がすごく高くて。お話ししていても、その姿勢をすごく感じました。私ももっと、その熱量を高くしていかなきゃいけないなって思いました」
もし自身が劇中の登場人物のように、大きな決断を迫られる立場だったら・・・。そんな質問には、少し笑いながらこう答えた。
「一度は行動してみるかもしれないです。何かしらアクションはしていると思います。めんどくさがりなので、本当にギリギリになるかもしれないですけど(笑)」
「20歳を越えて、姿勢が変わった」
デビューから10年。20歳を過ぎた頃から、仕事への向き合い方にも変化があったという。「20歳を越えてからは、お仕事に対する姿勢が変わってきたかなと思います。もっと成長しなきゃいけないな、何か変えなきゃいけないなと思って、そこからワークショップにも通い始めました」

もともと新しいことへ挑戦することが好きだという南。その姿勢は、これからの目標にもつながっている。「やったことのないことに挑戦していきたいですし、海外の作品も、もし機会があれば出演できたらうれしいなと思っています」
そんな南には、長年大切にしている言葉がある。「大丈夫、大丈夫。いつか飛び抜ける日がきっとやってくる」小説『西の魔女が死んだ』の一節だ。
ライジング・スター・アジア賞を受賞した今も、現状に満足することなく、新しい挑戦を求め続ける。その原動力となっているのは、「芝居が好き」という変わらない思いと、自身を支え続けてきた「大丈夫、大丈夫」という言葉なのかもしれない。
ニューヨークで受け取った「ライジング・スター」の称号は、決してゴールではない。映画を愛し、学び続けながら、新たな挑戦を重ねる南沙良。その歩みは、日本映画とともに、これからさらに世界へと広がっていきそうだ。
取材・文/ナガタミユ
















