TABLE VERTE

小さなキッチンから生まれる大きなアイデアの「しあわせ」メニュー

 ニューヨークの街にはあちこちにスポーツクラブがあり、「オーガニック」「ベジタリアン」「ビーガン」などという言葉を日常的に目や耳にし、スーパーマーケットにはチキンやサーモンの隣にビーガン用の惣菜がごく普通に売られていたりする。
 「ベジタリアン」とは野菜を中心とした食生活を実践している人のことだが、「ビーガン」は卵や乳製品も一切口にせず、そればかりか動物性の素材を使った衣服や靴も身に付けない人を指す。健康上からだけではなく、宗教上からの理由という人も多く、さまざまな人種や宗教の人たちが暮らすニューヨークらしい。

 イーストビレッジの1本はずれた静かな通り。辺りには、小さいけれど常連客でにぎわう洒落たレストランが軒を連ねている。フレンチベジタリアン・ビストロ「TABLE VERTE(テーブル・ベルテ)」もそんな店のひとつで、店内にはコレといった洒落た設えやインテリアはないが、鮮やかなグリーンのテーブルが印象的な全38席のスペースだ。

顧客からの好感度も高いエグゼクティブシェフのケン・ラーセン氏

 シェフのケン・ラーセン氏は、ニューヨークで生まれ、フランスで料理を学んだ、毎日2人の娘にごはんを作っているシングルファザーだ。彼が作る料理が、菜っ葉や生のサラダばかりの味気ないメニューだと思ったら大間違い。リークとグレープフルーツ、ビーツとにんじん、芽キャベツとストロベリーといった意外な素材の組み合わせに、野菜の甘さや旨味を引き出すためグリルなどのひと手間をかけ、自然の素材から作られた個性的で濃厚なドレッシングやソースをプラスするなど、彼の料理に対するパッションとアイデアにはただただ驚かされる。

 身体に良いものをカロリーを気にすることなく食べられる、罪悪感のない満足感。この店を「ベジタリアン」「ビーガン」御用達にしておくのは、もったいない。「野菜を丸ごと食べる」というコンセプトは、一般の人たちにも共有できる。野菜が足りていないと感じた時、食べ過ぎの日が続いた時、身体が重いと感じた時─そんな時のためにぜひ覚えておきたい。

 小さな小さなキッチンは、歩かなくても、動かなくても全てに手が届くのではないかと思えるほどで、ここから全てのテーブルの全ての客の顔が見える。ケン氏はきょうもこの小さなキッチンで、2人の若いスタッフと共に、大きなハートからあふれるアイデアで心に触れる「しあわせ」な一皿を生み出している。

絶品! 芽キャベツとストロベリーのロースト「Balsamic Roasted Brussels Sprouts & Strawberries」

これもはずせない!ポテトのグラタン風ニョッキ「Gnocchi Parisian au Gratin」

TABLE VERTE
プライス $$
127 E 7th St, NYC(bet 1st Ave & Avenue A)
212-539-0231
www.tablevertenyc.com
<ディナー>
月~木曜:5pm~10pm
金・土曜:5pm~11pm