ボストンの連邦地方裁判所判事は6月8日、トランプ政権が新設したH-1Bビザの申請手数料10万ドルを無効とする判決を下した。各メディアが同日、伝えた。厳格な移民政策を推進する政権には痛手となる。

ボストン連邦地方裁判所のレオ・ソロキン判事は、カリフォルニア、マサチューセッツ、ニューヨーク、ニュージャージーなど20の州の主張を支持、政権のビザ政策を無効とした。同判事は、「行政府が権限を逸脱し、連邦機関による規制の策定および発令の手順を定める行政手続法に違反した」と結論付けた。ソロキン判事は判決文に「裁判所は、本政策が議会による必要な権限委譲なしに、H-1Bビザ申請に対して課税するものであると判断する」と記した。
制度改革どころか採用活動が停止
トランプ大統領は2025年9月19日、外国人労働者がアメリカ人の雇用を奪うのを防ぐ手段として、それまで215ドルだったH-1Bビザの申請手数料を10万ドルに引き上げる大統領令に署名。アメリカ国内外の雇用主、学生、労働者の間で混乱とパニックを引き起こし、ボストンをはじめとする全米各地で複数の訴訟が起きた。ボストンの訴訟では、各州は、同政策が小・中・高校の教員や公立大学の教職員の採用を妨げ、学術研究を阻害し、医療従事者の減少を招くと主張していた。

また、法廷への提出書類により、同政策はH-1Bビザ制度を改革するどころか、事実上その採用活動を停止させていたことが判明。2026年2月中旬時点で、実際にこの手数料を支払った雇用主は全米でわずか85社にとどまっており、これは同手数料が歳入や規制の手段ではなく、完全な“ボトルネック”として機能していたことを示している。
判決による即時的および長期的な影響
1. 雇用主に対する即時の財政的救済
今回の判決により、同政策は全米規模で「全面的に」無効となった。当面の間、アメリカ市民権・移民局(USCIS)は10万ドルの追加料金を請求することが禁止される。IT大手から公立学区に至るまで、スポンサーとなる雇用主は、大統領令発令前の費用体系に基づき、新たなH-1Bビザ申請を提出することができる。
2. 公共部門の人材確保の回復
20州が主導した訴訟では、この追加手数料が公共機関に深刻な損害を与えているとの主張が認められた。今回の判決により、公立大学、K-12学区、医療システムは、予算破綻に陥ることなく、研究者、教師、医師などの重要な外国人人材の採用を直ちに再開できるようになる。
3. 返金問題を巡る混乱の懸念
同政策が全面的に無効化されたため、政策が有効であった期間中に10万ドルの手数料を支払った雇用主に関する喫緊の課題が残されている。地方裁判所の判決では企業への返金手続きについて具体的な仕組みが示されなかったため、早期に支払った雇用主は、当局からのさらなる指針を待つ間、法的な宙ぶらりんの状態に置かれている。
法的闘争、今後の見通し
司法省は、同判決を不服として速やかに控訴し、緊急の執行停止を請求する見通し。執行停止が認められれば、控訴裁判所が本件を審理している間、10万ドルの手数料が一時的に復活する可能性がある。今回の判決は、この手数料を支持した2025年12月のワシントンD.C.地方裁判所の判決と対立しているため、法律専門家は、この問題が最高裁へ迅速に持ち込まれると指摘している。
第2期トランプ政権が導入した移民法
1. H-1Bの申請手数料引き上げ→却下
2. 永住権(グリーンカード)取得の申請手続きを自国の領事館で行うことを義務化
3. SNSへの投稿記録を含む徹底的な審査基準の厳格化→処理の遅延や証拠提出要請が急増
4. 国土安全保障省(DHS)を通じて、裁量的な就労許可証(EAD)を取り消すか、その発行を制限する規則案を提示→これらの政策により、高度人材の供給源全体が約29%減少する可能性がある。
第2期トランプ政権が提案中の移民法案
2026年アメリカ・ホワイトカラー労働者雇用法
2026年6月、議会に提出。H-1Bビザの抽選制度を厳格な賃金ベースの制度に置き換え、ビザの有効期間を2年に短縮し、F-1ビザのオプショナル・プラクティカル・トレーニング(OPT)を完全に廃止することで、就労ビザ制度を大幅に再構築することを目的としている。しかし、過激な内容であることから立法アナリストらは成立の可能性は低いと見ている。
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