日本語を話す子どもたちのための私立学校として、1979年に創立されたニューヨーク育英学園。これまで35年間、2歳半から高校生まで数千人以上を見守り、育て、送り出して来た。今回は、同学園の「りんごラーニングセンター」にある「きりんのへや」を紹介する。
スタートはいろいろ、家庭環境もいろいろ
子どもも親も共に育っていける環境
ニューヨーク育英学園には、全日制の幼児部・小学部だけではなく、サタデースクールやサンデースクール、アフタースクール、フレンズアカデミーなど、年齢や目的に合ったさまざまなスクールや施設がある。「りんごラーニングセンター」の「きりんのへや」には、2歳半から年長児までの子どもたちが毎日元気に通って来る。
登録されているのは、現在約50人。この日登園してきた子どもたちは、積み木やボールなどで思い思いに自由遊びを始めた。それを子育て経験者のお母さん先生だけではなく、男性も含む先生たちが見守る。基本的な保育時間は午前9時から午後4時までだが、昼食前まで、お昼寝前まで、また午前8時からの早朝保育や午後5時半までの延長保育など、保護者の予定や状況などに合わせて選ぶこともできる。自由遊びや昼食、お昼寝、おやつといった毎日の基本的な流れは決まっているが、フィンガーペイント、はさみの練習、クッキング、リトミック&ダンス、体育、ニューヨーク育英学園の校庭や近くの公園に出掛ける外遊び、米国人の先生によるESL、お誕生日会など、充実のスケジュールに合わせて登園日や時間を決める保護者もいるという。
次の行動に移る前には、先生の周りに子どもたちが円陣を組んで座り、「お集まり」と呼ばれる小さな会が行われる。外遊びに出掛ける前のお集まりでは、靴の履き方やスクールバスの乗り方に加え、「きょうは風が強いから、上着のボタンやジッパーを上までキチンとしめましょう」という先生からの注意事項もあった。それに耳を傾け、自分で準備をする。先生の話の途中に騒いだり、歩き回ったりする子どもたちはいない。昼食時も、その姿が変わることはなかった。「初めて来たばかりの頃は、大変です。歩き回ったり、叫んだりする子どももいます。でも、毎日の生活やおともだちとの関係の中で自然に身に付き、家に帰ってもできるようになります」とマネージャーの半場綾子氏は教えてくれた。
「先生、あのね」 本当に伝えたいことを日本語で
ここでは、トイレトレーニングのまだできていない子どもも受け入れてくれる。「スタートはいろいろ、家庭環境もいろいろです」と半場氏は言う。アレルギーやファーストエイドなどへの対応はもちろんだが、おもらしをしてしまった子どもの汚れた下着や心のケアまで、ここでは当たり前にしてもらうことができる。大事なこと、本当に伝えたいことを「先生、あのね」と日本語で伝えられる環境。だからこそ、子どもたちは安心し、落ち着いて穏やかでいられるのだろう。
また、それは子どもたちだけではない。子育ての悩みや不安で「心配の塊」になっている保護者にとっても同じだ。ここには参観日はない。だが、それはいつでも子どもの姿を見に来ることが許され、なんでも相談することができるということを意味している。「35年続けて来て、初めてわかったことがある」と岡本徹学園長は語る。それは、「教えるよりも、一緒にやってみること」。親と子が共に育っていける環境が、確かにここにはある──。
ニューヨーク育英学園
りんごラーニングセンター きりんのへや2460 Lemoine Ave, Suite103~105, Fort Lee, NJ
☎201-947-4707
www.JapaneseSchool.org
www.NYIKUEI.org
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