飯島真由美 弁護士 Legal Cafe Vol.24 離婚の際の生活費サポート(Maintenance) ガイドラインについて

 ニューヨーク州では、離婚の争議が続いている際のテンポラリーの生活費サポート(Maintenance)の計算式はありましたが、離婚後のサポートについては考慮すべきファクターがあったのみで、計算方法はありませんでした。しかし昨年の法の改正により、離婚後のサポートについてもガイドラインが設定され、ことしの1月25日以降に申請された離婚に適用されることになりました。今回はそのガイドラインと具体的な計算式について簡単にご説明致します。
※注/配偶者間の合意の上でサポートの有無や金額を決める場合は、ガイドラインに従う必要はありません。

①サポートを受け取る側
 簡単に言えば、収入の高い配偶者がもう一方に支払う形になります。ただし、収入にそれほど開きが無い場合は支払いの対象にはなりません。
②ガイドラインの「収入」とは?
 収入には、通常の給与のほか、投資金(investment)や年金保険(annuity)からの収入、失業保険、年金や障害年金、家賃収入、副業からの収入なども全て含めます。
③ガイドラインの「控除」とは?
 連邦と州の所得税は控除とならず、一般的には仕事上で必要な経費(自己負担金のみ)、以前の配偶者やその子どもに支払う生活費サポートや養育費、ニューヨーク市またはヨンカーズ郡税、ソーシャルセキュリティ税、メディケア税のみが控除となります。
④生活費サポート(Maintenance)金額の計算方法
 この計算式は、サポートの支払いをする配偶者の収入が178千ドル(約2千万円)以下の場合に適用されます。
 【離婚に際し、養育費を支払う子どもがいる場合】支払いをする配偶者の収入の20%から支払いを受ける配偶者(親権を取ると仮定)の収入の25%を引いた金額。例えば、夫と妻の控除後の収入がそれぞれ8万ドル、4万ドルとすると、8万ドル×20%=1万6千ドル、4万ドル×25%=1万ドルですので、1万6千ドルから1万ドルを引き、年間で6千ドル、月額500ドルがサポートの金額になります。養育費は別に計算します。
 【養育費を支払う子どもがいない場合】支払いをする配偶者の収入の30%から支払いを受ける配偶者の収入の20%を引いた金額、あるいは夫婦合算の収入の40%から支払いを受ける配偶者の収入を引いた額の内、どちらか低い額。前の例で言うと、8万ドル×30%=2万4千ドル、4万ドル×20%=8千ドルですので、2万4千ドルから8千ドルを引き、年間1万6千ドル。あるいは12万ドル×40%=4万8千ドルから4万ドルを引いて8千ドル。この場合、8千ドルの方が低いので、年間8千ドル、月額666・67ドルがサポートの金額になります。
⑤支払いの期間
 婚姻日から離婚申請までが15年以下(15年を含む)の場合はその期間の15~30%、15年以上20年までの場合はその30~40%、20年以上の場合はその期間の35~50%が支払い期間の目安となっています。例えば結婚期間が18年10カ月の場合は、5年8カ月~7年6カ月が生活費サポート支払期間の目安です。
 特定の事情がある場合や、配偶者の収入が178千ドル以上ある場合は、ガイドラインが使われないことがあります。
※詳細は、裁判所のウェブサイトをご覧になるか専門家にご相談ください。

今月のお店
Aroma Espresso Bar
145 Greene St at W Houston St
広々とした店内ではPCで仕事をする人も多い。コーヒーを飲みながら、大きな窓から行き交う人々を眺めるのもの楽しい。

 
 

 

飯島真由美 弁護士事務所
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NY州認定弁護士。法政大学文学部、NY市立大学ロースクール卒業。みずほ銀行コンプライアンス部門を経て独立。2010年に飯島真由美弁護士事務所を設立。家庭法、訴訟法、移民法など幅広い分野で活躍中。趣味はカフェ巡り。