春なのに寒い。いや、NYの3月というのはまだまだ寒いのだった、と思い直し、雪がちらつく空を見上げたこの月のある日、ファッション業界を目指すことに決めたのだから、善は急げだ、とひとまずファッションについて学ぶことにした。
自分でもなんと単純なんだろうと思ったが、じゃあタカコさんのいるようなファッションの業界で働くとして、一体どんな勉強やどこから始めたらよいのかは、さっぱり分からないのだった。
やる気と情熱だけはあるんだけどな
体力だってあるし、何に対してだって一生懸命こなす。日本人だし、忠誠心にも自信がある。でも、どうやって、あの業界へのチャンスを掴むべきなのだろうか。今、私が憧れる職業をしている人は、一体どうやってその職業に就いたのだろうか。ファッション業界ってツラくて厳しいと聞くしな…。狭き門だしな…。
凍てつくような風が吹き付けて寒く、身体が縮こまると、なんだか胸が張れず、自信もついでになくなってきた。身体と精神はつながっているって、こういうことね。
そんなときは、壮大な何でも叶いそうな気がしてくる「ニューヨークの空気」をダイレクトに感じるに限る。NYにはそういう、夢に向かって走っていける空気やオーラが充満しているし、どんな小さな夢や叶いそうにない夢、ばかばかしいような目標でも、誰もさげすんだりしない。NYで起こる全てが「自分次第」なのだ。そんなところが本当に好きだな、と実華子は思った。
まだまだ春の息吹の見えないセントラルパークへ来た。ここに来るとNYの四季が感じられる。ここに来るたびに、本当にパワースポットだなと思う。
60丁目の出入口付近でウロウロしていたら、プラザホテルが目に入った。そういえば、タカコさんたちがお茶することがあるなどと話していた。例え高くついたとしても、ここで1人でお茶してみよう。実華子はホテルのスタッフに会釈しながら、少しドキドキして中に入っていった。ティーラウンジまで行くとすごくおしゃれで美人な女性が階段を降りてくるのが見えた。この上には何があるのだろう? すれ違うように階段を上がってみると、そこはビジュアル本ばかりを扱う高級書専門店だった。
ファッションのインスピレーションになりそうなものばかり!やはり夢に近付くには、小さな1歩でも動いてみることから始まるのだ。

インスパイアされた本屋
Assouline 768 Fifth Avenue
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