日本画家の千住博さん=写真左=が今年のイサム・ノグチ賞を受賞、16日夜、クイーンズ区ロングアイランドシティーのイサム・ノグチ美術館で授賞式が行われた。同時受賞は英国人建築家のジョン・ポーソンさん。同賞は、彫刻、絵画、インテリアデザインなど多岐に活躍したイサム・ノグチの国際的かつ革新的な精神を受け継ぎ、東西文化交流へのコミットメントを共有する個人に授与、今年で4回目(関連記事3面に)。

授賞式での千住さんとポーソンさん (photo: Benjamin Lozovsky/BFA.com)

「ウォーターシュライン」 2010 2.5 x 17.9 m 羽田空港国際線ターミナル 撮影:Nacasa & Partners Inc
絵画にはまだ強い発言力がある
多くの絵を描く人たちに感じてほしい
千住さんから本紙に寄せられたコメント。
今から30年も前、メトロポリタン美術館でイサム・ノグチの常設作品「ウォーターストーン」を初めて見ました。これはざっくりと削った大きな石から、水が静かに流れている作品です。
現代アートの流行に翻弄されることもなく、あらゆる境界を超え、自然の側に身を置き、自然とコラボレーションするタイムレスの作品でした。
いつか私もこんな作品が作れるようになりたい、とこの作品の前に立ち尽くして、しばし眺めていたものでした。
30年経って、イサム・ノグチ賞を受賞することになりました。奇しくも私の作品は、先週までメトロポリタン美術館でこの「ウォーターストーン」の斜め前に展示されていました。「ウォーターストーン」の水の流れる音が、滝を描いた私の作品の筆力及ばないところを、随分助けてくれていたと感じました。
あっという間に、時も、滝のように流れたと思い返しています。
受賞は大変光栄、と思うのと同時に、私は、あの30年前、無名の若い私を揺り動かし、私の制作の方向性を決定させたイサム・ノグチの作品のように、私の作品が若い人の人生を揺るがすほどの強い刺激に満ちているかと自問しています。
また、この受賞を通して、アートシーンにおいて、新しい表現に圧倒されて絵画が衰退してしまったかのように見える現在、絵画にはまだ強い発言力がある、ということも示せたのかもしれません。それを多くの絵を描く人たちに感じてほしいと思います。
この賞は、私が代表して、絵画全体が受賞したものと私は受け止めています。

千住博さん
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