飯島真由美 弁護士 Legal Cafe Vol.43 職場でのハラスメント

 日本では近年、セクハラと同様、パワハラ(パワーハラスメント)という言葉を頻繁に耳にするようになりました。今回は、ニューヨーク州での職場におけるハラスメントについて簡単に説明します。

パワハラ
 米国ではパワーハラスメントという言葉は一般的ではなく、ハラスメントまたはブリーング(bullying)と言います。しかしニューヨーク州の職場でもこうした行為は大きな問題となっており、私の事務所でも相談を受けます。
 ただし日本で言われる、「暴言」「虐め」「社員の前での叱責」などのパワハラ行為は、米国では通常、人種、国籍、性別、性的指向、年齢などの差別が根拠となっている場合に違法行為とみなされます。
 逆にこれらの差別に基づかないでパワハラを受けている場合は、その度合いにもよりますが、法的措置を講じるのは難しくなります。また精神的苦痛(emotional distress)を理由に提訴する場合の要件は非常に高くなります。パワハラを受けたと思ったらまず、上司や人事部などに報告・相談しましょう。会社はパワハラについて報告義務を定めていますし、早急な解決につながることが多いです。
 それでも会社の対応が遅い場合は、公的窓口(連邦政府および州と市)や弁護士など専門家に相談しましょう。また、上司や人事部に相談したために報復行為を受けることがあるかもしれません。これはもちろん違法ですので、当局に訴えることができます。なお、暴力を受けている場合は迷わず警察に通報してください。

セクハラ
 パワハラよりも先に言葉が浸透したセクハラ(セクシャルハラスメント)ですが、職場でのセクハラ行為は後を絶たないようです。
 これを受けて、ニューヨーク州議会は6月19日、職場でセクハラ被害を訴えやすくする法案を可決しました。被害の証明基準を緩和する他、被害報告後の従業員への保護も強化しました。また、全雇用主に対し、全従業員を対象にした反セクハラ研修を従業員が最も理解しやすい言語で実施すること、セクハラ防止のマニュアルを作成・配布することも義務付けました。
 なお新しい法律では、セクハラの被害者となるのは従業員だけでなく、無給インターンや、請負業者なども含まれます。またセクハラの加害者も従業員の他、会社に出入りする業者や得意先も対象となります。
 ニューヨーク州労働局は、マニュアルや研修用のモデル素材を同ウェブサイトに掲載しています。詳細は、州労働局またはニューヨーク市人権委員会のウェブサイトを参照してください。

ニューヨーク州労働局:
www.labor.ny.gov/home
ニューヨーク市人権委員会:www.nyc.gov/humanrights

今月のお店
Trademark Grind
38 W. 36th St.(bet. 5th & 6th Aves.)
www.trademarktaste.com
コーヒーと自家製焼き菓子の店。ブルックリン区のスイート・リーフ・コーヒー・ロースターのコーヒーを取り扱う。奥のレストランではマグロのポケやスパゲッティなどが食べられる。カクテルメニューも豊富。


飯島真由美 弁護士事務所
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NY州認定弁護士。法政大学文学部、NY市立大学ロースクール卒業。みずほ銀行コンプライアンス部門を経て独立。2010年に飯島真由美弁護士事務所を設立。家庭法、訴訟法、移民法など幅広い分野で活躍中。趣味はカフェ巡り。