クレカ不要のショッピングローン
奨学金の返済と同じく若者を苦しめているのが、スマホなどの普及によるネット金融や銀行によるカードローンだ。いずれも簡単に借金ができ、借金という感覚を生まないため、「カジュアル借金」などという言葉につられて簡単に借りてしまい、その後、返済に追われることになる。
たとえば、批判されているのが、「ZOZOTOWN」(ゾゾタウン)が始めた、ツケ払いシステムだ。これは、購入した服の支払いを324円の手数料を払うことで、2カ月先にまで持ち越せるサービス。支払いはコンビニ決済か銀行振込だが、クレジットカードが必要ないので、若者を中心に人気を集めている。
しかし、2カ月後に324円の利息を付けて返済をすると仮定した場合、金利は年約65%となる。これは、消費者金融よりはるかに高い金利だ。
こうしたショッピングローンは数多くあり、「スマホだけで借り入れ返済できる」「審査がネットで済む」で利用者を増やしている。
「いずれ返せる」と気軽に借りてしまう
大手銀行のカードローンも問題になっている。有名芸能人を使って「借り入れ5万円までなら半年間は無利息」などと、キャッシングの気軽な利用を宣伝しているが、利息は年2.0%~14.0%が平均的で、これはかなりの高率だ。
銀行のカードローン残高は、2008年3月の3兆3451億円から2018年には5兆8186億円と2兆5000億円も増加している。
これは、低金利で儲からなくなった銀行が、この分野に力を入れたためで、とくに2015年以降は貸付残高が消費者金融を上回るようになり、銀行が消費者金融と化してしまった。
若者たちは、大学生といえども金融知識に乏しい。日本では金融教育がほとんど行われていないので、「いずれ返せる」と気軽に借りてしまう若者が多い。若者が借金する理由は各種調査によると3つある。1は生活費、2は遊興費、3はクレジットカードの決算のため。
このうち1がダントツに多いから、いまの若者たちの生活が収入だけでは成り立たないことがわかる。
しかし、借金を背負うと、返済が済むまでは身動きがつかなくなる。20代は、勉強やビジネスの面で、自己投資を行なう年代なのに、それができなくなる。結婚できない若者が急増しているが、その理由に借金が占める割合が多くなっている。最近、「債務整理なら豊富な実績を誇る○○にお任せください」という弁護士事務所の宣伝がやたらに目につくようになったのも、「若者の借金漬け」が拡大したからである。
今回はここで終わる。次回以降はアメリカや中国のケースを紹介して、この問題をさらに考える。
(了)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
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