連載520 山田順の「週刊:未来地図」 中国の台湾侵攻は近いのか? 「米中対立」激化のなか日本が取るべき一本道(中2)

連載520 山田順の「週刊:未来地図」 中国の台湾侵攻は近いのか? 「米中対立」激化のなか日本が取るべき一本道(中2)

非難応酬はお互いの国内向けの演出か?

 しかし、現在のメディア報道、とくに日本の報道は行き過ぎである。「対立」とか「対決」という言葉に踊らされていると、現実を見誤る。

 今回の両国の応酬が、メディアの前で行われ、カメラが回っていたことを考えてみるべきだ。なぜ、両国ともプレスを退席させなかったのか?

 それは、応酬を見せるためで、その演出効果を狙ったからだろう。ブリンケンも楊潔篪も、激しい非難を相手に向かって言っていたのではなく、自国の国民に見せるために言ったのだ。

 つまり、ブリンケンは「人権問題を抱える異質の国家、中国に対してアメリカは戦い続ける」と、楊潔篪は「アメリカの脅しには屈しない」と、お互いの国民にメッセージを送ったのである。

 この演出は、大成功だった言える。アメリカでは、トランプの強硬策を支持した層がバイデンを見直すようになり、中国では愛国ムードが一気に高まった。

 その証拠に、中国ではアメリカ側をやり込めた楊潔篪に拍手喝采が起こり、なんと、「反米愛国Tシャツ」が売り出され、通販サイト「淘宝」(タオバオ)で飛ぶように売れた。

 Tシャツには「中国人はその手は食わない(中国人不吃這一套)。アメリカは中国に上から目線で話す資格はない」という文字がプリントされていた。

なぜ台湾侵攻は「6年以内」なのか?

 アメリカの政治が腐敗し、民主主義が破壊され、国が分断されることにまでなってしまった元をただせば、政治献金に関する法律の変更にある。

  アラスカ「2+2」会談で演出があったとはいえ、いまや米中が競争関係に入り、「冷戦」状態にあるのは事実である。問題は、この「冷戦」が「熱戦」になってしまうかどうかだ。その象徴が、中国による台湾侵攻である。

 ではなぜ、インド太平洋軍司令官デービッドソンは、台湾侵攻の可能性を6年以内と言ったのだろうか?

 なにか、アメリカは確証的な情報でも掴んでいるのか?そう思って、アメリカ政治の専門家に聞くと、次のような答が返ってきた。  「インド太平洋軍の司令官ですから、侵攻が近いと言うことで予算が得られるからでしょう。6年としたのは、情報があるからではなく、単純な理由からだと思います。

 習近平(シージーピン)は、2022年秋の共産党大会で、党書記としての3選を目指しています。党書記の任期は5年ですから、今年の1年と3選後の5年を足して6年になります。

 つまり、習近平は6年計画で台湾を併合しようと考えている。そうアメリカは見ているわけです」

 香港で民主化を封じ込め、「1国2制度」の形骸化に成功したことで、習近平はますます自信を深めているという。

 「ただし、彼もバカではありません。コトは急がないでしょう。自身の3選まであと1年以上ありますし、アメリカはバイデン政権になったばかりですから、来年秋までは駆け引きはしても強硬なことはしない。そうアメリカは見ています。

 バイデンもブリンケンも過去に『一つの中国』を認めると発言しているので、アメリカとしても早急になんらかの実効的な措置を取る気はないと思います」

(つづく)

この続きは4月26日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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