連載564 山田順の「週刊:未来地図」コロナで出生率低下、出生数激減、 従来の考え方では少子化は止まらない!(上)

連載564 山田順の「週刊:未来地図」コロナで出生率低下、出生数激減、 従来の考え方では少子化は止まらない!(上)

 コロナ禍で少子化が進んでいる。厚生労働省の発表によると、去年の出生率は1.34で、1年間に生まれた子どもの数(出生数)は約84万人。これは、記録的な減少である。

 このままだと、日本の人口はどんどん減っていくため、政府は「こども庁」を設置して、少子化・人口減をなんとか食い止めようとしている。しかし、いま考えられている政策では少子化・人口減は止まりそうもない。なぜなのだろうか?

 

生まれてくる子どもの数が大幅に減った

 1人の女性が産む子どもの数の指標が「出生率」である。6月4日、厚労省は去年の出生率が1.34だったことを発表した。これは、5年連続の前年割れで、前年から0.02ポイントの低下。また、去年1年間に生まれた子どもの数(出生数)も発表され、その数は約84万人。こちらは、1899年に統計を取り始めて以降もっとも少ない数字となった。

 ちなみに、都道府県別の出生率は、高い順に、沖縄1.86、島根1.69、宮崎1.68。もっとも低いのは東京で1.13。

 なお、これまで出生率がもっとも低かった年は2005年で、1.26だった。また、人口維持に必要な出生率(人口置換水準)は、2.07とされている。

 少子化に関しては、もう30年も前からずっと言われ続けているので格別驚くことはない。ただ、去年の出生率、出生数の急激な落ち込みがコロナ禍のせいであることは、深く憂慮すべきことだ。なんといっても、これによって人口減が加速し、経済をはじめとした日本の国力がどんどん低下していってしまうからだ。

 すでに、日本は人口減社会に突入し、年間の死者数はここ数年140万人弱で推移している。これに対して生まれてくる子どもの数は、前記したように昨年が約84万人だから、1年間で人口が50万人以上も減っていることになる。毎年、毎年、県庁所在地クラスの都市が、一つずつ消えていっているのと同じだ。

 日本のコロナ禍は、いまだに続いている。そのため、今年の出生数は昨年を下回るのは確実。シンクタンクなどの試算によると、80万人を大きく下回るという。

コロナが収束すれば回復するのだろうか?

 今回のコロナ禍で起こったのは、「結婚の先送り」や「出産控え」である。これはある程度予想できたこととはいえ、実際の数字を見ると、そのひどさに驚く。

 厚労省の発表によると、去年1年間に結婚したカップルの数は52万5490組。なんと、前年と比べて7万3517組も減少している。もちろんこれは戦後のレコードで、1年間の減少数としては1951年以降でもっとも多かった。

 結婚数が減ったうえに、結婚したカップルが子づくりを控えたのだから、出生数が激減するのは当然だ。ただ問題は、コロナが収束すれば、出生率、出生数は回復するのだろうか?ということだろう。

 朝日新聞の記事『コロナで出生数激減「産み控え」の先にあるべき社会は』(5月30日)では、人口問題など未来予測の研究をしている経済産業研究所の藤和彦コンサルティングフェローが、次のように述べている。

 「コロナによって社会が変わったのではなく、元々見たくないと先送りしていた問題が、5倍、10倍のスピードで顕在化したという認識です。つまり一過性のものではなく、このトレンドはもう変わらないと思います」

(つづく)

 

この続きは7月2日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。  ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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