連載567 山田順の「週刊:未来地図」コロナで出生率低下、出生数激減、 従来の考え方では少子化は止まらない!(下)
なぜフランス、スウェーデンは成功したのか?
一般的に、欧米諸国も少子化に悩まされてきたというのが、日本人の共通認識だろう。ただし、そのなかで少子化対策に成功した国がいくつかあることも知られている。
その典型例が、フランス、スウェーデン、オランダである。この3国は、一時期出生率が1.5ぐらいまで低下したが、ここ数年で2.0近くまで回復している。
フランスは、日本と同じように1960年代半ばまでベビーブームにより出生率が上昇したが、1970年代の末に急激に低下。それでも1980年代は1.8台を維持しだが、1993年に1.66まで低下した。そのため、政府は社会保障を手厚くし、子育て家庭を支援した。当初は家族手当などの経済的支援が中心だったが、次第に保育の充実へとシフトし、その後さらに出産に対しても手厚く支援した。
いわゆる「両立支援」がフランスの最大の特徴だ。両立とは、仕事と家庭の両立(いわゆるワークライフバランス)で、これができるように政府は企業の取り組みを促し、環境を整備した。その結果、出生率は1990年後半には上昇に転じ、2000年以降は1.9台まで上昇し、近年では2.0台を維持するようになった。
スウェーデンもフランスと同じく、ここ40年近く、子育て家庭への経済的支援と両立支援を進めてきた。たとえば、児童手当は多子加算制で、子どもを多く持てば増える。また、世界で初めて男性も育休を取れる制度を導入した。
スウェーデンの特徴は、徹底した男女平等の視点に立ち、社会全体で子どもを育んでいくとう制度づくりをしてきたことである。
ヨーロッパに学んだのに失敗した日本
このような成功例があるため、日本もそれに学んで、これまで少子化対策を行ってきた。出産や子育て支援を充実させながら、ヨーロッパ型の両立支援も取り入れてきた。
たとえば、かつて民主党政権は大胆な「子ども手当」を提唱し、子どもを産むインセンティブを高めようとした。
また、その後の安倍政権も「女性が働きやすい国や社会ほど出生率が高い」「仕事と子育ての両立困難を解消すれば少子化は防げる」という観点から、ワークライフバランスを提唱し、待機児童の解消、保育園の充実などを行なってきた。
しかし、その成果は今日まで、まったく表れていない。これまでの日本の少子化政策は、ヨーロッパ諸国と比べれば、失敗と言うはかないのである。いったい、なぜ、こんなことになってしまったのだろうか?
それは、日本の少子化対策が、ヨーロッパの成功国の表面的なコピーであり、為政者の社会に対する認識が根本的に違うからだ。
日本の少子化対策を見てみると、そのほとんどは、共働きをする女性への支援、つまり結婚家庭への支援であり、はっきり言うと、従来の家庭観に基づいている。
婚外子、事実婚カップルを認めない
日本は標準モデルが大好きで、たとえば「標準家庭」(夫婦に子ども2人の4人家族)を理想として、ほとんどの制度がつくられてきた。要するに、こうした標準家庭をイメージして制度がつくられているため、いまの時代に対応できないのだ。
少子化の原因を分解すると、前記したように、結婚しない人間が増えていることに行き着く。しかも、それは結婚しないではなく、できないという経済的要因による。とすれば、すでに結婚している共働き夫婦への支援を主軸にしても、少子化を食い止めることはできない。
こうした点をズバリ指摘し、「欧州モデルの少子化対策から脱却せよ」(『Voice』2020年12月号)と説いているのが、この分野の専門家で中央大学文学部教授の山田昌弘氏だ。山田氏には『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』(光文社新書、2020.5)という本があり、そこでは、日本社会と欧州社会が違う点が述べられている。
たとえば、フランスやスウェーデンでは、生まれる子の半分以上が婚外子、つまり、結婚していない女性から生まれている。したがって、両国とも、結婚していない事実婚カップルや婚外子に対しても、手厚く支援している。
しかし、日本では、婚外子はほとんどいないし、結婚しないまま同棲だけの事実婚カップルも少ない。日本の同棲率は未婚者の2%未満、婚外子率も2%前後にすぎない。
つまり、日本は新しいかたちのカップルや婚外子を認めないから、少子化は止まらないのである。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
【読者のみなさまへ】本メルマガに対する問い合わせ、ご意見、ご要望は、私のメールアドレスまでお寄せください。 → junpay0801@gmail.com
→ 最新のニュース一覧はこちら←
RECOMMENDED
-

客室乗務員が教える「本当に快適な座席」とは? プロが選ぶベストシートの理由
-

NYの「1日の生活費」が桁違い、普通に過ごして7万円…ローカル住人が検証
-

ベテラン客室乗務員が教える「機内での迷惑行為」、食事サービス中のヘッドホンにも注意?
-

パスポートは必ず手元に、飛行機の旅で「意外と多い落とし穴」をチェック
-

日本帰省マストバイ!NY在住者が選んだ「食品土産まとめ」、ご当地&調味料が人気
-

機内配布のブランケットは不衛生かも…キレイなものとの「見分け方」は? 客室乗務員はマイ毛布持参をおすすめ
-

白づくめの4000人がNYに集結、世界を席巻する「謎のピクニック」を知ってる?
-

長距離フライト、いつトイレに行くのがベスト? 客室乗務員がすすめる最適なタイミング
-

機内Wi-Fiが最も速い航空会社はどこ? 1位は「ハワイアン航空」、JALとANAは?
-

「安い日本」はもう終わり? 外国人観光客に迫る値上げラッシュ、テーマパークや富士山まで








