連載646 山田順の「週刊:未来地図」 中国の「第二文革」による経済失速が日本を直撃。
インフレ大転換で生活崩壊! (下)
かつて中国は日本のデフレの震源地だった
中国経済の発展モデルは、低賃金による労働集約で「世界の工場」になることだった。中国の低賃金労働にもっとも頼ったのは、ほかでもない日本である。
その結果、中国でつくられた安価な工業製品は世界中に輸出され、先進国のインフレ率を1990年代半ばに2%台まで引き下げた。日本はもっと大きな影響を受け、長期にわたるデフレに沈むことになった。
日本製品は中国製品に駆逐され、日本の労働者の賃金も物価も上がらなくなった。日本の長期にわたるデフレは、中国が震源地だったのである。
しかし、いまの中国は昔の中国ではない。中国の労働者の賃金は毎年上がり続け、いまや沿岸部の都市労働者の賃金は日本と変わらない。金融、ITなどの業種では、すでに日本をしのぎ、欧米並みになっている。
しかも、中国では生産年齢人口が減っている。賃金が上がったうえ、働き手が減っているのだ。
今年の5月に発表された「2020年国勢調査」によると、中国の総人口は14億1178万人で、この10年間で年平均0.53%増えている。しかし、増えたのは65歳以上の高齢者であり、15~64歳の生産年齢人口は9億6776万人とピークの2013年から3800万人も減っている。
この生産年齢人口の減少は、人手不足を招き、賃金の上昇に拍車をかける。物価上昇も招く。これに、習近平が始めた「第二文革」が加われば、どうなるだろうかは説明するまでもない。
中国の輸出額は、世界全体の1割超に達している。そのため、国内物価の上昇は、世界の物価上昇に即つながる。
いまや、中国はデフレではなく、インフレの輸出国になろうとしているのだ。
いまもデフレだというのは本当か?
菅政権は、日本の国内総生産がコロナ前の水準に戻る時期について、「今年中」とアナウンスしてきた。しかし、政権を投げ出したため、新政権が誕生するまでは、なんの経済対策も打てない。すでに限界に達した量的緩和が続いていくだけになった。
そんななか、インフレの足音が確実に聞こえてくる。
内閣府は、いまだにデフレが続いていると言っているが、本当だろうか?
食料品中心にステルス値上げが続いているし、実際、最近では野菜が値上がりしている。クルマの価格も上がっており、若者がクルマを買わなくなったのも、価格上昇のせいではないかと思える。また、100円ショップに行けば、100円以上する商品が多くなっていることに気づく。
日本企業は、「失われた30年」の間、ともかく安さを追求して、価格を抑えることに心血を注いできた。しかし、その努力ももう限界に達しているのではなかろうか。
日本の消費者、つまり私たちは、過去30年以上にわたって「物価は上がらない」という状況に慣らされてきた。そのため、密かに進むインフレに気づかなくなっているのではなかろうか。
(つづく)
この続きは11月9日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

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