連載784  これが最良シナリオ プーチンのロシアはどのように崩壊するのか? (上)

連載784  これが最良シナリオ プーチンのロシアはどのように崩壊するのか? (上)

(この記事の初出は5月3日)

 すでに何度も指摘してきたように、ウクライナ戦争は長期化する。となると、今後、西側による経済制裁で、ロシアがどうなっていくかが最大の焦点だ。
 はたして、プーチン政権の崩壊はあるのか? そうなったとき、ロシアという国はどうなるのか?
 今回は、日本と西側にとって最良と思える、ロシア崩壊のシナリオを示してみたい。現在、西側が望んでいるのは、このシナリオだ。ただし、このシナリオどおりになる可能性はかなり低い。

 

英国のレポートは長期戦を予測

 西側陣営の経済制裁は、いまのところ効いていない。しかし、じわじわと効いて、やがてロシア経済は回らなくなり、プーチン大統領は権力を失って、ロシアは旧ソ連のように崩壊する。これが、いま、西側が考えている理想的なシナリオだ。
 もし、そうなれば、それは日本にとっても最良のシナリオである。このまま、アメリカの世界覇権が衰退し、世界が米欧と中ロに分断されることになれば、ただでさえ経済衰退が止まらない日本は、さらに衰退しかねない。
 これまで世界中で、数多くのウクライナ戦争に関する予測が出てきたが、そのなかでもっとも的確だったのは、「RUSI」(英国王立防衛安全保障研究所)のリポートだ。
 アメリカや日本のメディアのように、楽観的ではなく、ロシアの外交・軍事・経済を詳細に分析して、「ロシアは長期戦に持ち込む準備を整えている」としていた。
 最近、さかんに言われている5月9日の対独戦勝記念日に、ロシアが「勝利宣言」するというのも、RUSIリポートが情報の出どころだ。
 しかし、RUSIの予測どおりに長期戦なると、世界も日本も持たない。とくに、日本はスタグフレーションが進むなかで、経済危機と戦後最大の安全保障の危機が同時進行するという「最悪の時代」に突入してしまう。
 そこで、ここでは「悲観シナリオ」とは逆の「楽観シナリオ」を提示してみたい。


モスクワ発ビッグニュースの可能性 

 いま、世界(西側諸国、とくにアメリカ)が望んでいるのは、ある日突然、「プーチン大統領が急死しました」というモスクワ発のニュースが流れることだ。
 こうなれば、ウクライナ戦争は確実に終結し、場合によってはロシアの専制体制は崩壊する。その結果、ロシアは西側に組み込まれ、世界はアメリカ一極支配体制に戻るだろう。ロシアが崩壊すれば、自動的に中国の力も衰え、アメリカ覇権は揺るがなくなる。
 これは、日本にとって、もっとも歓迎すべき世界である。
 では、本当にそんなことが起こるのか?
 ロシアという国を考えれば、起こらないとは言い切れない。ロシア国内には、反プーチン、反体制派勢力が暗躍しており、米英の諜報機関もさかんに工作を行っている。
 なにしろプーチン大統領は、世界を舐めきった長細い大テーブルの端に座り、各国の首相、国連事務総長と距離を置いて会談しているのだ。
 プーチン大統領の最近の言動を追うと、核の脅しが増してきているのがわかる。これは、彼が追い詰められ、不測の事態に恐怖を抱いている現れとも言える。

(つづく)

 

この続きは6月8日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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