連載805 株価はもう上がらない!
世界経済は試練の「長期低迷」へ (一の中)
(この記事の初出は6月7日)
株価は経済成長と連動して上がる
株価を動かす最大の要因は、経済成長である。株価は経済成長と連動して上がる。1531年にベルギーのアントワープに世界初の証券取引所が設立されて以来、幾多の変動はあったが、この連動は続いている。
とくに19世紀末から今日まで、世界全体の経済成長が著しかったので、株価も連動して上がった。
ちなみに、経済成長の背景には人口増がある。1990年に16~17億人だった世界人口は2020年には約78億人に達した。この人口増による経済成長をエンジンとして、株価は今日まで上がり続けてきた。
ここ30年を見ても、NYダウは1990年代前半に3000ドルほどだったものが、いまはその10倍以上、3万ドル台に達している。この間、アメリカ経済は、グローバル化、IT化で年々成長を遂げてきた。新興国の経済も急成長した。
しかし、日本経済だけは「失われた30年」を続けたため、株価は上がらなかった。つまり、日本の株価もまた経済“低迷”と連動していたのだ。
ちなみに、世界人口は2050年に97億人に達し、その後、増加率は落ち、22世紀前にはピークアウトすると推計されているので、そこで世界の経済成長は止まる。つまり、半世紀先は株価が上がらない世界がやってくる。これが、大局的な見方だ。
経済成長だけでは説明がつかない株価上昇
ただし、現在は、経済成長以外に株価を上げている大きな要因がある。じつは、これから投資を始めるとしたら、こちらのほうがはるかに大事だ。
1990年、アメリカのGDPは約6兆ドルだった。それが、2021年は約23兆ドルに増えた。つまり、GDPは30年間で約4倍になった。しかし、前記したようにNYダウはなんと10倍以上になっている。なぜ、株価の上昇率は経済成長率をはるかに上回っているのだろうか?
日本株を見てみよう。日本のGDPは1990年、約462兆円だった。2021年は542兆円である。つまり、30年間で1.17倍にしかなっていない。したがって、株価がバブル崩壊以来低迷を続けたのは当然と言える。
しかし、ここ10年はどうだろうか。アベノミクスが始まった2013年、株価は1万円ほどに過ぎなかった。それが、昨年秋には一時的とはいえ3万円台をクリアした。経済はまったく成長していないのに、株価は上昇を続けたのだ。
この理由は、あまりにも単純だ。日米ともに大規模な金融緩和により、市場にマネーが増えたからである。中央銀行が市場に大量のマネーを供給した。その結果、マネーが株式市場に大量に流れ込んだからだ。
ただし、日本の場合は、日銀やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの公的資金が株を買い続けたことも、大きな要因である。
株価を決めるのは「ワールドダラー」
ここ30年、世界の通貨供給量(流通する現金と預貯金などを足したもの)は、実体経済の規模を上回るペースで膨らんできた。 ここ2年余りはコロナ禍による大規模財政支援が加わったため、約100兆ドル(約1.3京円)に達したという推計がある。
これは、世界のGDP総額よりも20%近く多い。
「ワールドダラー」という指標がある。「これは、米国の中央銀行に相当するFRB(連邦準備理事会)のマネタリーベースと、各国の中央銀行が外貨準備として保有する米ドルを合算したものである」と、日経新聞の解説欄で解説されている。
このワールドダラーは、1990年には約4000億ドルだった。その後、世界経済の成長とともに伸びて、リーマンショック直前の2008年には約5倍の2兆ドルに達した。
ところが、ここから膨張ペースが加速する。リーマンショック後、FRBをはじめとする各国の中央銀行がいっせいに量的緩和(QE:Quantitative Easing)を始めたからだ。これにより、2020年には9兆ドルに達した。さらに、ここにコロナ禍による財政支援が加わったので、現在は10兆ドルを超えていると思われる。
このワールドダラーの動きは、間違いなくNYダウと連動している。NYダウは、実体経済以上に、ドルの総量が増えたから値上がりを続けてきたのだ。
(つづく)
この続きは7月8日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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