連載826 ロシアは必ず負けて衰退する! フィンランド冬戦争・継続戦争の教訓② (完)
(この記事の初出は6月29日)
42万2000人の人々が故郷を失った
こうして、1940年3月12日、「モスクワ講和条約」が結ばれた。これにより、フィンランドは国土面積のほぼ10%に相当するカレリア地峡の主要地域を失った。
カレリアはフィンランドの産業の中心地であり、第2の都市ヴィープリがあった。この地域には、当時の全人口の12%にあたる42万2000人の人々が住んでいた。
しかしソ連は、10日間の期限を切って、故郷を離れて移住するか、ソ連市民となるかの選択を迫った。いま、ロシアがウクライナの占領地で行なっていることと、まったく同じである。もちろん、ほとんどの人々が故郷を離れて、フィンランド領内に移り住んだ。ヴィープリはいまはロシアの一地方都市である。
このように、モスクワ講和条約は、あまりにも屈辱的な内容だった。それでもフィンランドは、民主主義政治体制と自由主義経済、なによりも独立を守り通した。
歴史に「イフ」はないというが、もしここでフィンランドが講和せず、英仏による支援を待って戦争を続けていたら、第二次大戦は全然違った展開になっていただろう。
ソ連はフィンランドにおいて、英仏軍と戦うことになったかもしれず、その場合は、連合国側には立てなかっただろう。このとき、英仏は中立国スウェーデンの意向を無視しても派兵する意向だったという。
再びソ連からの完全独立を目指したが
現在、ウクライナ支援は、開戦時ほど盛り上がっていない。米英独は支援を続けているが、国内には「ブレジンスキー疲れ」から、これ以上介入すべきでないという意見も出始めている。
しかし、それは歴史的に正しい判断だろうか?
ウクライナ戦争において、このままロシアの獲得領土支配を認めて停戦しても、ウクライナが受けた屈辱は消えない。失われた人命も報われない。プーチンの野望、考えは変えられない。
冬戦争から1年余り、世界情勢は大きく変わり、1941年6月に独ソ戦が始まった。ヒトラーは独ソ不可侵条約を破棄してソ連に攻め込んだ。
これは、冬戦争後も圧力をかけ続けるソ連に対して、反旗を翻すチャンスとみたフィンランドは、ふたたび本当の独立を目指してソ連と戦うことになる。これが、「第二次ソ連フィンランド戦争」とも言う「継続戦争」である。
この戦争により、フィンランドは枢軸国側とされ、連合国の敵となってしまった。そして、1944年9月、ドイツから離脱することを条件にソ連と再び講和し、再度領土の割譲と賠償金を支払うことになった。
この戦争で6万5000人の死者を出したが、結果的にフィンランドは第二次大戦後、東欧諸国のようにソ連の属国として、共産主義の支配下に置かれることを免れることになった。
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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