連載1019 2070年人口3割減8700万人の衝撃 じつは実際はもっと深刻! (下)

連載1019 2070年人口3割減8700万人の衝撃 じつは実際はもっと深刻! (下)

(この記事の初出は2023年5月9日)

 

「地方創生」「地方移住」という愚策

 人口減によるお先真っ暗な未来など誰も考えたくもない。そのため、メディアが取り上げるのは、「町おこし」「村おこし」「地方移住」の成功例ばかりだ。しかし、成功例といっても、それは観光客(インバウンドも含め)が増えた、移住者が増えたという程度で、国内に限っては人が右から左に移動しただけで、総人口が増えたわけではない。ゆるキャラやご当地グルメをいくらつくっても、それは単なる自己満足に過ぎない。
 総人口が増えないのだから、もしどこかの地域で人口が増えたとしても、それはほかの地域から人口が流入したということで、流出した地域はさびれる。それなのに、「地方創生」などいう政策に税金をつぎ込んでいるのだから、政府も地方自治体も愚かすぎる。
 たとえば国は、2019年から東京への一極集中を解消するために、「地方創生起業支援事業・地方創生移住支援事業」というのを始めた。
 これに応募して地方に移住すると、単身の場合は、最大60万円、世帯で移住の場合は最大100万円が支給される。さらに、起業の支援金を合わせると、その支援金額は最大で300万円になる。
 これに全国の地方自治体が「ぜひうちに移住を」と、移住者に移住一時金、住居購入補助金、家賃補助金など出して、地方創生競争を繰り広げている。

「町おこし」は悲劇的な結末を迎える

 すでに全国の地方都市では、駅周辺がさびれ、シャッター通りが日常化し、住宅地に空き家が目立っている。それなら、どのように効率的に縮小していくか考えるべきなのに、「町おこし」などという背伸びをすると、事態はさらに悪化する。シャッター通り、商店街の復興などは、人口減のなかではやるべきことではない。
 たとえ話をしてみたい。ここに、100店舗が営業中の商店街があり、この商店街の商圏の人口は今後20年間で半減するとする。となると、普通に考えると、需要が半減するのだから、店の数も半数の50店に減るのが自然な流れだ。
 ところが、どの店も自分が淘汰される半数になりたくないと競争を開始する。値下げ合戦、宣伝合戦、コスト削減合戦などを始め、結局は、どんどん疲弊していく。そういうなかで、何店かが集まり、イベントをやったりして集客に精を出したりするが、商圏人口が減るのだからなにをやっても無駄だ。
 もし成功するとしたら、その地域の商圏外から集客できたときだけである。
 ただし、これは他地域から客を奪っただけで、本当の意味での商売繁盛ではない。つまり、人口減少の下での「町おこし」は、悲劇的な結末を迎えるのだ。
 地方創生は安倍政権下で2014年から始まった。本当に無駄な税金がつぎ込まれたものだ。結局、成果などなく、最大の目標だった東京一極集中も解消されなかった。それなのに、岸田政権は、今年から新たな地域活性化策「デジタル田園都市国家構想」を開始した。

(つづく)

この続きは6月13日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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